エース社員が辞めてしまう主な理由
エース社員の退職は、企業にとって大きな損失になるでしょう。では、なぜエース社員が辞めてしまうのでしょうか。考えられる理由として、下記の3つがあります。
・能力的に相応しい待遇ではないから
・やりがいを感じられなくなったから
・人間関係が悪いから
それぞれの理由を理解して、エース社員が辞めなくなる職場をつくっていきましょう。
能力に相応しい待遇ではないから
能力に相応しい待遇が用意されていない企業だと、エース社員が辞める傾向にあります。優秀な社員は、ほかの社員と比べて要領良く仕事をこなせるため、同じ勤務時間でもより多くの仕事をすることになります。
そのため、同じ業務や立場なのにも関わらず、周囲の同期と同様の待遇だと、能力に見合っていないという不満につながるでしょう。
また、管理職になった途端、残業代が支給されなくなり、手取りが減ってしまうケースも珍しくないです。管理職になれば、仕事量や責任が増えるため、その代償に見合う待遇でないと、会社への不信感につながります。
エース社員に仕事が集中するにも関わらず、それに見合っていない待遇の会社は、社員が辞めてしまう会社の特徴のひとつです。
やりがいを感じられなくなったから
エース社員は、常に向上心を持って仕事に取り組んでいるため、成長している実感を求めています。
そのため、役職や報酬を上げて裁量を持たせたとしても、その状態に慣れてしまうと物足りなさを感じてしまうでしょう。
また、周囲のレベルが低い環境の場合、ちょっとした努力でも評価されてしまうため、どこか物足りなさを感じてしまいます。
エース社員になるような人材には「自分の限界を超える経験をしたい」「お互いを認め合う対等な同僚と話し合いたい」「人生をかける価値のある面白い仕事をしたい」といった欲求があります。その欲求が満たされない職場だと、ある程度仕事で成果を出した時点で、転職活動を始めてしまいます。
さらに、エース社員は他社からも注目されるような存在なため、スカウトされることも珍しくありません。
人間関係が悪いから
エース社員は仕事ができるが故に上司から嫌われたり、同僚から嫉妬されたりするケースがあります。その結果、職場で孤立し、人間関係によるストレスで会社を辞めてしまう場合があります。
部下が退職してしまうことでお悩みの方は、下記の記事もご参考ください。
関連記事:「部下の退職理由、本当は自分のせい?信頼される上司になる3つの方法」
エース社員の退職が及ぼす悪影響
エース社員は、企業の成長に欠かせない存在です。エース社員が退職してしまうと、下記のような悪影響を及ぼすおそれがあります。
・組織全体の生産性が低下する
・組織全体のモチベーションが下がる
・社員が目標を失ってしまう
・中長期的な人材育成が困難になる
組織全体の生産性が低下する
高いパフォーマンスを維持して働いていたエース社員の退職により、組織全体の生産性が低下する可能性があります。
特に、エース社員に依存している場合は、引き継ぎに苦労したり、業務が回らなくなったりして社員一人ひとりの負荷が増えるでしょう。
また、代わりを担えるような人材が採用できていないと、事業成長に遅れが出るだけでなく、場合によっては既存顧客から契約を打ち切られてしまう危険性もあります。
心理学的にみても、優秀な社員が周囲にいるだけで生産性が上がるという統計があるため、ほかの社員にも無意識に影響を及ぼしている場合があります。
組織全体のモチベーションが下がる
社員の多くは、ロールモデルをエース社員に設定していることが多いため、能力やスキルで尊敬できるエース社員の退職は、他の社員のモチベーション低下の原因になってしまいます。
また「あのエース社員の方が辞めたなら私も辞めよう」というように、退職が連鎖することもあります。
社員が目標を失ってしまう
エース社員が辞めることで「将来はエース社員のように自分もなりたい」と思える目標がいなくなってしまいます。
理想のキャリアプランを描き、その実現に向けて努力するための指針がないため、業務に対するモチベーションも上がりづらくなってしまうでしょう。
中長期的な人材育成が困難になる
エース社員の退職で組織全体のモチベーションが低下してしまうと、教育研修や人事評価に力を入れたとしても、本質的な動機づけが行えません。
結果として、会社が描いている中長期的な人材プランどおりに、教育研修や人事評価を行ったとしても成果をなかなか得られない状況になってしまいます。
エース社員が辞める予兆とは
エース社員が退職すると、周りの社員に影響があるだけでなく、会社全体の損失にもなります。エース社員の退職を防ぐには、辞めようとする兆候をいち早く察知し、対策を打つことが重要です。エース社員が辞める予兆を3つ紹介します。
コミュニケーションが消極的になる
エース社員の職場でのコミュニケーションが今までよりも少なくなっている場合、退職を考えている可能性があります。
退職後は会社の方との関係は基本的になくなります。積極的にコミュニケーションをとっても意味がないと考えるのが、会社を辞めたいと考えているエース社員の会話が減る理由です。
仕事で必要なコミュニケーションは取っていても、これまでのように雑談に加わらなくなったり、上司への相談がなくなったりするなどの兆候があれば要注意です。
仕事に対するモチベーションが低くなる
これまでと比べて、エース社員の仕事へのモチベーションが低くなっている場合、退職を考えている可能性があります。この先も続けていこうと思える職場であれば、積極的な言動として現れるためです。辞めると決心した後はやる気も出なくなるため、モチベーションも下がります。
会議で積極的な発言がなくなったときは要注意といえるでしょう。また、自分主体でプロジェクトが進むことを避け、チームを引っ張るのではなくサポートする立場に回ろうとする行動が見られることもあります。
また、これまで残業をいとわなかったエース社員が、定時で退社することが増えた場合も退職の予兆といえます。辞めようとする会社のために、自分の時間を使ってまで働くモチベーションを保てないことが理由です。
休みをよく取るようになる
エース社員が休みを頻繁に取るようになるのも退職の予兆といえます。退職すると決心した後に有給休暇を消化しているとも考えられるためです。また、退職後にすぐに新しい仕事ができるように、転職のための準備を進めている可能性もあります。
エース社員の退職を防ぐ対策
エース社員が会社を辞める兆候が見られる場合は、迅速な対策の実施が必要です。
ここからは、エース社員の退職を防ぐ対策について解説します。
昇進・昇格を適切に行う
エース社員の退職を防ぐためには、昇進・昇格を適切に行うことが大切です。適切に昇進や昇格を行うことで、やりがいや充実度が高まります。その結果、会社への貢献度が高まり、エンゲージメントの向上につながります。
まずは、成果と評価を連動させる仕組みを構築しましょう。評価基準が不透明で感覚的になっている場合、エース社員の理解は得られません。
そのため、公平に評価する、正解に対して褒める、評価の妥当性をもたせるといった点を考慮して、評価体制を構築すると良いでしょう。
上記のように具体性があり、どこまでやれば評価されるのか分かりやすい評価制度は、エース社員のモチベーションにもつながります。
経営者とのコミュニケーションを増やす
会社が実現しようとしているビジョンと、エース社員が成し遂げたいビジョンが一致している状態が、働くモチベーションを高めます。
そのために、経営者と社員で月1の会食や対談を実施するなど、定期的なコミュニケーションの機会をつくると良いでしょう。
実際に経営者がコミュニケーションをとるときは、下記の注意点に気を付ける必要があります。
・経営者や経営幹部から声をかける
・「言う」ではなく「聞く」を意識する
・クローズ質問ではなくオープン質問をする
・業務の指示は直接行わずに上長を通して行う
・一人に長い時間をかけなくても良い
大切なのは、会社と個人のビジョンのすり合わせです。
1on1を週1で実施する
コミュニケーションの機会や質、量の低下は、退職の原因になりやすい傾向です。そのため、1on1(上司と部下で行う15〜30分の定期的なミーティング)を実施して対話の場を設けるようにしましょう。
1on1の際は仕事の話だけでなく、ワークライフバランスや給与の納得度、本人が抱えている悩みなどをヒアリングすると良いでしょう。
エース社員から辞めたいと言われたときの対処法
エース社員から退職の申し出があったとしても、職場環境や労働環境を改善することで、退職を踏みとどまってもらえる可能性があります。エース社員に辞めたいと言われたときに上司としてどのような対処ができるのか、3つの方法をみていきましょう。
話をしっかり聞く
エース社員が会社を辞めたい理由として、会社への不満や悩みが根底にある場合もあります。退職したい旨を伝えられたら、なぜ会社を辞めたいのか、時間をかけてしっかり理由を聞くようにします。
退職したい理由だけを聞き出すのではなく、現状で抱えている悩みや、どういった望みがあるのかも丁寧に聞くようにしましょう。退職の理由に対して意見をしたり、助言をしたりするのではなく、寄り添う姿勢が何よりも重要です。
退職したいと考えている相手の気持ちを尊重して話を引き出すことで、退職を思いとどまらせる解決策が見つかる可能性もあるのです。
改善の意思を伝える
エース社員の退職の理由や、会社への不安などを聞いた後、会社側で改善できる余地があれば改善していく意思があることを伝えます。さらに、問題点について具体的な改善案があれば、エース社員に対して丁寧に伝えるようにします。
改善点についてしっかり取り組む意思や、改善するための取り組みが見られれば、退職を踏みとどまってもらえる可能性もあるでしょう。エース社員が辞めたいと思っている原因がなくなれば、退職する理由もなくなるためです。
キャリアビジョンに適した条件に見直す
エース社員が退職を考える理由として、自分自身のキャリアビジョンが、現在の会社のポジションと合わなくなってきていることも考えられます。
エース社員から退職の意思を伝えられたら、将来どうなりたいと考えているのか、どのような働き方を目標としているのか、キャリアビジョンを確認しておきましょう。
エース社員に、退職を取り消して会社に残りたいと思ってもらうためには、思い描くキャリアビジョンに適した条件の見直しも効果的です。キャリアパスを考慮に入れた待遇や、条件の見直しや改善を提示することで、退職を引き留められる可能性もあります。
まとめ
エース社員が辞めることは、会社に大きな損失を与えます。そのため、どうしたらエース社員が辞めずに働きやすい環境をつくれるかが企業にとっての課題になるでしょう。
まずは、社員が辞めてしまう原因を分析して、それにあった対策法を実施してみてください。