放置すると危険なクラッシャー上司とは?特徴や対策を紹介

近年、「クラッシャー上司」が職場における深刻な問題として浮上しています。この言葉は、部下を精神的に追い詰める一方で、自身は昇進していくタイプの上司を指す造語です。 クラッシャー上司は業務成果を重視し、厳格な態度で部下に接しますが、その結果として職場環境や部下の士気に悪影響を与えることがあります。今回は、クラッシャー上司の特徴とその職場への影響を詳しく分析し、問題を解決するための具体的な対策について考察します。


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クラッシャー上司とは?

クラッシャー上司とは、「クラッシャー(物を壊す機械)」と「上司」を組み合わせた造語です。部下を精神的に追い詰めながらも自身は出世していく特定のタイプの上司を指すために、精神科医の牛島定信氏とその教え子である松崎一葉氏によって名付けられました。

松崎氏の著書『クラッシャー上司 平気で部下を追い詰める人たち』では、このタイプの上司が企業組織内でどのように振る舞い、部下にどのような影響を与えるかについて詳しく述べられています。

近年では企業コンプライアンスの重要性が高まったため、こうした行動が問題視されるようになり、注目されるようになりました。

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パワハラ上司との違い

クラッシャー上司とパワハラ上司は混同されることがありますが、根本的に異なる特徴を持っています。

・パワハラ上司の場合
感情的な八つ当たりや、特定の部下への個人的な嫌がらせが主な行動パターンです。明確な業務目標を持たないまま、感情的な行動を部下にぶつけることが特徴です。

・クラッシャー上司の場合
明確な業務成果を追求するために、部下に厳しい態度を取ります。その厳しさは業務効率の向上や目標達成を意図したものですが、結果として部下を精神的に追い詰めてしまうことがあります。

両者の違いを正しく理解することで、職場環境の改善に向けた効果的な対策を立てることができます。

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クラッシャー上司の主な特徴

クラッシャー上司は、一見すると仕事において成果を出しているように見える一方で、職場環境や部下に大きな悪影響を与えるのが特徴です。そのため、部下からの信頼を失い、離職率の上昇や組織全体のパフォーマンス低下を招くことがあります。

部下への思いやりに欠ける

クラッシャー上司は、常に自分中心の考え方で行動する傾向があります。自分の価値観を基準に物事を判断し、相手の視点で考えることが苦手です。異なる価値観や背景を持つ方を否定的に扱うため、部下は上司に対して不信感を抱きやすくなります。また、部下を褒めることが苦手なため、モチベーションの低下を招くことも少なくありません。

自分の失敗は認めない

自分の間違いや失敗を認めたがらないクラッシャー上司は、問題が発生しても責任を他人に押し付ける傾向があります。このような態度は職場の信頼関係を崩し、環境悪化や離職率の増加といった深刻な問題を引き起こす可能性が否定できません。

仕事に関しては優秀

クラッシャー上司は効率や利益を最優先に考えるため、結果を出す能力に優れていますが、その分部下の気持ちに配慮する余裕がなくなることがあります。一見すると問題が見えにくい上司ですが、その態度が部下の士気に悪影響を及ぼすことが少なくありません。

承認欲求が強い

自分の存在や行動を他者に認めてもらいたいという欲求が強く他人の意見を否定したりネガティブな反応を示したりすることがあります。このような行動は部下を萎縮させ、意見を出しにくい職場環境を作り出してしまうでしょう。

仕事に私情を挟む

クラッシャー上司は、部下の評価に私情を持ち込むことがあります。気分によって評価が変わるので、部下は常に緊張を感じ、安心して働けません。結果として、部下の不安が企業への不信感に繋がるリスクも高まります。

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クラッシャー上司が標的にする人


クラッシャー上司は誰に対しても同じように接するわけではなく、特定のタイプの社員を標的にする傾向があります。ここでは、クラッシャー上司が標的にしやすい社員のタイプについて詳しく解説します。

優秀な社員

クラッシャー上司は、優秀な社員に対して攻撃的な態度を取ることがあります。これは、自分の地位を脅かす可能性のある部下を排除しようとする心理が働くためです。

クラッシャー上司自身が経営層から認められたいという強い欲求を持っているため、自分の立場が奪われることを恐れ、優秀な部下に対してパワハラ的な行動を取ってしまうのです。

具体的には、優秀な社員が成果を出したときに、その功績を自分の手柄として報告したり、部下の評判が上がらないようにあえて否定的な発言をしたりすることがあります。

また、心の中では部下のアイデアが優れていると理解していても、指摘できる部分を必死に探して批判することもあります。

このような行動により、成果を横取りされた部下は仕事に対する意欲を失い、経営層が適切に評価やフォローをしなければ、優秀な社員ほど離職してしまうリスクが高まります。

成果を出せない社員

クラッシャー上司は、成果を出せない社員に対して冷淡な態度を取る傾向があります。自身が優秀であるがゆえに、指示通りに動けない部下や期待に届かない成果を出す社員に対して、否定的な感情を抱くことがあります。

こうした上司は、「なぜ指示通りにできないのか」「理解力が足りないのではないか」といった、業務指導の範囲を超えた発言をする場合があります。

自分が難なくできることを他人もできて当然と考えているため、部下のつまずきに対して共感を示しにくい傾向があります。

その結果、部下が継続的に人格を否定されていると感じ、精神的な負担を抱えることになり、メンタルヘルス不調や離職につながるケースも少なくありません。

主観的に嫌う社員

クラッシャー上司は、自分にとって相性が悪いと感じる部下や、主観的に苦手意識を抱いている社員を無意識のうちにターゲットにすることがあります。そうした部下に対して、業務の指摘を超えた過剰な注意や、細かなミスの指摘を繰り返す傾向が見られます。

また、好意的な評価を一切行わず、表情や言動に好悪の感情がにじみ出てしまう場合もあります。こうした環境下では、部下が過度に緊張し、人間関係にストレスを感じて職場を離れることを選ぶケースもあります。

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クラッシャー上司が会社に与える影響

クラッシャー上司が会社に存在することで、組織全体に深刻な影響を与える可能性があります。特に社内の雰囲気や人材育成、会社の評判において、負の連鎖を引き起こすリスクが高くなるでしょう。

社内全体の雰囲気が悪くなり、モチベーションも下がる

クラッシャー上司は他人の意見を否定する傾向が強いため、部下が意見を発言しなくなります。その結果、社内の雰囲気が悪化し、社員同士のコミュニケーションが減少するケースも少なくありません。

否定的な発言が周囲に広がることで、組織全体がネガティブ思考に陥る危険性も高まり、結果、社員のモチベーションが低下して生産性にも影響を及ぼしかねません。

優秀な人材が流出する

部下のミスを厳しく追及するクラッシャー上司の下では、部下は大きなストレスを感じやすくなります。このストレスが原因で、メンタル不調に陥り、休職や退職を選ぶケースも少なくありません。

さらに、成長の機会を奪われると感じた社員が離職を決意することもあります。結果として、優秀な人材が他部署や他社へ流出すると、チームの生産性が大幅に低下します。

人材育成が滞る

クラッシャー上司は自身の失敗を認めず、部下に責任を押し付けることが多いです。このような状況では、部下は萎縮し、新しいことに挑戦する意欲を失います。

挑戦の機会が減少することで、部下が成長する場を失い、結果的に組織全体のスキルアップが停滞します。この停滞は、長期的には組織の競争力を低下させる要因となるでしょう。

会社の評判が下がる

部下をどなりつけるクラッシャー上司の姿が外部の人々に目撃されると、会社全体のイメージが損なわれる可能性があります。このような行為が繰り返されると、企業文化が不健全だと見なされ、商談機会の減少にもつながりかねません。

また、退職者や求職者の間でハラスメントが話題になり、外部にもその情報が広まると、会社の評判がさらに悪化するでしょう。これにより、新たな人材確保が難しくなるリスクが生じます。

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クラッシャー上司の被害を防ぐ効果的な対処法

クラッシャー上司の存在は、チームのパフォーマンスや職場環境に悪影響を及ぼします。しかし、適切な対処法を実施することでこうした問題を解消し、健全な職場環境を築くことが可能です。ここでは、具体的な対処法を解説します。

社内の評価制度を見直す

評価制度の見直しは、クラッシャー上司を防ぐために重要な手段のひとつです。例えば、360度評価を導入することで、上司だけでなく部下や同僚からもフィードバックを得られる仕組みを整えることができるでしょう。このような客観的な評価制度を採用することで、特定の人物に依存した評価が避けられ、クラッシャー上司の発生を抑制する企業風土が形成されます。

また、評価制度の見直しは、組織内の風通しを良くする効果も期待できます。透明性の高い評価基準を設定することで、従業員が安心して意見を述べることができ、相談しやすい雰囲気が醸成されるためです。

研修制度を導入する

研修制度の導入は、クラッシャー上司の問題に対処するための有効なアプローチです。まず、コンプライアンス研修を定期的に行うことで、上司のどのような言動が部下に悪影響を与えるのかを理解するきっかけをつくることができます。

さらに、管理職研修を実施することで、クラッシャー上司の価値観や行動を変革する支援が可能です。例えば、自分の価値観や行動が部下にどのようなストレスを与えているのかを知ることで、上司としての振る舞いを見直す機会を提供できます。また、社内で十分な研修を実施することが難しい場合は、外部専門機関の協力を検討することも効果的です。

東京・ビジネス・ラボラトリー(TBL)の企業向け研修では、独自の心理学メソッドを活用し、従業員の思考プロセスを深く理解した上で、職場環境を改善する支援を行っております。管理職向けのプランもご用意しているため、興味がある方はぜひお気軽にお問い合わせください。

相談窓口を設置する

クラッシャー上司に悩む従業員が相談しやすい環境を整えることは、職場改善において非常に重要です。クラッシャー上司は仕事ができる場合が多く、そのために「自分が上司についていけないだけだ」と思い込み、問題が表面化しにくい傾向があります。

相談窓口を設置することで、こうした悩みを抱える従業員が、安全に相談できる場を提供できます。この窓口の支援体制の信頼を確立するには、人事部の担当者や外部の専門家を含むチームで運営するのが良いでしょう。また、相談の内容に応じて適切な対応策を迅速に講じることが大切です。

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クラッシャー上司による被害が発生した場合の対処法

企業には、労働基準法や労働安全衛生法に基づき、従業員の安全と健康を守る義務があります。

そのため、クラッシャー上司による被害が報告された場合には、迅速かつ公正な調査と適切な対応を行うことが求められます。

以下では、被害発生時に企業が取るべき具体的な手順を紹介します。

事実関係を調査する

まず、被害の事実を正確に把握するための調査を行います。

相談者に対して丁寧なヒアリングを行い、内容を調査報告書として記録します。その際、メールの送受信履歴や録音データなど、トラブルを裏付ける客観的な証拠を提出してもらうことが重要です。

次に、相談者の承諾を得た上で、関係者や目撃者へのヒアリングを実施します。その後、行為者(加害者)本人にも事情を確認し、双方の主張が食い違う場合は再度のヒアリングを行って、事実を慎重に検証します。

調査の最終段階では、内容の確認を行い、対象者の署名をもって記録を確定させます。こうした手続きを踏むことで、後のトラブルを防ぎ、公平な判断ができる基盤を整えます。

パワハラの有無を判断する

調査で得られた情報をもとに、行為がパワハラスメントに該当するかどうかを判断します。

パワハラには、「人格を否定するような叱責」「業務に必要のない長時間の叱責」「特定の部下を意図的に排除する」などの行為が含まれます。

厚生労働省のガイドラインに照らし合わせながら、発言や態度が業務の適正な範囲を超えていないかを慎重に確認します。

この段階で、パワハラの疑いが強い場合には、速やかに被害拡大を防ぐ措置を検討することが必要です。

被害者への配慮の措置を行う

パワハラの事実が確認された場合、企業は被害者への配慮措置を講じる義務があります。
まず、加害者からの謝罪の機会を設けるとともに、両者を引き離すための配置転換など、被害者が安心して業務を続けられる環境を整えます。

また、心身の不調の兆しがある場合には、産業医やカウンセラーなど専門スタッフによる相談窓口を案内し、メンタルケアを受けられる体制を整えます。

被害者のプライバシーを保護しながら、再発防止を意識した支援を継続することが大切です。

クラッシャー上司を指導する

クラッシャー上司に対しては、行為がコンプライアンス違反や法律に抵触する可能性があることを明確に伝え、適切な指導を行います。

行為内容の悪質性や継続性に応じて、再発防止研修や面談による改善指導を行い、それでも改善が見られない場合は懲戒処分の検討も必要です。

また、上司本人が自らの行動を客観的に振り返り、部下との関わり方を見直せるよう支援することが望まれます。

単に罰するのではなく、職場全体の意識改革につなげる取り組みが、健全な組織づくりにつながります。

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まとめ

クラッシャー上司は、部下の精神的負担を増大させ、組織のパフォーマンス低下や優秀な人材の流出を招くリスクがあります。しかし、評価制度の見直しや管理職研修、相談窓口の設置などの対策を講じることで、問題を緩和して健全な職場環境を実現可能です。職場の改善に向けた第一歩として、ぜひ具体的な行動を検討してみてください。

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