中堅社員が会社を辞めていく理由
中堅社員が辞めていくという事態はどこの会社でも起こり得るものです。しかし、適切な対処をしなければ辞めていく流れを止めることができず、人材の流出や不足を招いてしまいます。
対処方法を考えるために、まずは中堅社員が辞めていく理由について確認しておきましょう。
やりがいを感じられないから
中堅社員は若手社員と比べ、仕事の理解や作業のスピードが速いため、上司から優先的に仕事を振られることが多いです。
しかし、色々な業務を引き受けてしまうと、ルーティンワークが多くなってしまいます。
ルーティンワークは、専門的な知識や高度な技術が不要です。そのため、ルーティンワークばかりの職場だと、中堅社員はもっとやりがいのある職場へ転職しようと検討してしまいます。
人間関係が悪いから
仕事内容自体に不満はないけれど、人間関係が良好ではないという理由で辞めていく方も少なくありません。
例えば、同僚との仲が良くない、上司と話が合わないなど、退職する理由にはさまざまな人間関係に関する問題が考えられます。
周りに気を遣い過ぎて不満をため込みすぎた結果、疲れてしまって辞めるという方もいるでしょう。
優秀な社員であれば、周りの人が嫉妬をして嫌味を言うなど、コミュニケーションが面倒になったことを理由にあげることもあります。
業務内容や役割だけでなく、会社内や部署内での人間関係にも気を配る必要があるといえるでしょう。
仕事が給料に見合わないから
辞めるかどうかを決断する上で、給与面などの条件も重要なポイントです。忙しくて負担が多い割には給料が良くない、残業代が出ずにサービス残業ばかりなど、仕事の負担と金銭面が釣り合わないと、退職を決断する大きな理由になります。
中堅社員ともなると、仕事上でも責任あるポジションについて、それに見合った給料を得ていることも珍しくありません。同年代の平均年収や待遇をみて自分は低すぎると感じれば、より良い条件で働ける職場を探すのは無理のないことでしょう。
周りは出世しているのに自分はそのチャンスが得られないというのも、辞める決断を後押しします。
金銭面の条件は、仕事に対する評価であるともいえます。正当な評価ができているか、仕事内容に見合った給与が設定されているかどうかは確認しておく必要があるでしょう。
会社の将来性に不安を感じているから
中堅社員は、会社全体の状況をある程度把握できる立場にいるため、自分の会社の将来性を予測しやすいです。
そのため、将来性に不安を感じていると、キャリアアップのために中堅社員が転職するケースが増えてきます。
優秀な人であればあるほど、自分の会社をシビアに予測しています。
優秀な人材を確保するためにも、激しい環境の変化に対応できるように、会社を常に変化させる必要があります。現状の結果に満足せず、新しい分野にも積極的に挑戦する必要があるでしょう。
仕事量が多くてストレスを抱えているから
前述でも紹介しましたが中堅社員は仕事を任せやすいため、仕事量が多くなってしまいがちです。
また、優秀な中堅社員であれば、重要な役職についている方も少なくないでしょう。仕事の量が増えると、ストレスに耐えられなくなってしまい、転職を考え始めます。
そのため、ルーティンワークのような専門的な知識が不要な業務は、新入社員に依頼したり、ICTツールで代用したりするなどの対策が必要です。
中堅社員の離職が会社に与える悪影響
中堅社員が辞めてしまうことで、どのような悪影響があるのでしょうか。
一人の退職が連鎖する
辞めるかどうかの決断は本人次第なのだから、仕方ないのではと考える方もいるかもしれません。確かに職場の選択は個人の自由であり、それを完全に防ぐことは不可能でしょう。
しかし、中堅社員の退職が続くような環境であるとしたら、今後の会社のためにも改善が必要です。
その理由のひとつは、一人の退職が連鎖する可能性があるということです。中堅社員が辞める会社は、何らかの問題を抱えている場合が少なくありません。
その場合、一人辞めたことをきっかけにして次々と退職していってしまうことがあります。
辞めた人が優秀で人望のある人だった場合、特にその影響は大きいです。上司も部下も「この人と一緒だったから続けられた」と感じていることが多いため、その人がいなくなればその職場にいる理由がなくなってしまうのです。
職場に来て仕事をするモチベーションがなくなってしまい、チームワークも悪くなってしまうかもしれません。
また、中堅社員がいなくなると、大事な仕事を任せられるポジションの人が少なくなってしまいます。
そのため仕事がうまく回らなくなったり、残された人が大きな負担を強いられたりすることも多いです。結果的に職場の雰囲気が悪くなって、後に続くようにして退職者が増えてしまう場合があります。
中堅社員一人が辞めること自体は個人の決断ではありますが、その周囲には影響を受ける人が多いということを認識しておかなくてはなりません。
会社を良い状態で維持するためにも、中堅社員が辞めていく環境は改善する必要があります。
仕事が回らなくなる
中堅社員に重要度の高い仕事を多く任せていた職場の場合、残されたその業務を社員全員でカバーする必要があります。
能力の高い中堅社員ほど、こなせる仕事量が多く、企業の依存度が高いです。
そのため、中堅社員が今まで行っていた難易度の高い仕事を他の社員が行わなければいけなくなるため、個々の負担が増えます。
その結果、仕事が回らなくなるという悪循環になってしまいます。
新規雇用や社員育成のコストがかかってしまう
中堅社員に限らず、社員が辞めたら増員する必要があります。新たに雇った社員を、辞めた中堅社員と同じレベルまで育成しようとすると、膨大な教育コストがかかります。
新規雇用や社員育成ともに、時間やコストがかかってしまうため、中堅社員が辞めたいと思わないような組織づくりをしなければなりません。
中堅社員が退職する予兆
中堅社員が退職する前には、どのような予兆があるのでしょうか。下記の兆候があった場合、離職の可能性が高まっています。予兆があったらすぐに対応できるよう体制を整えておきましょう。
休暇取得の頻度が増える
有給休暇を取得する頻度が高くなったら、転職活動をしている可能性があります。また、出勤へのモチベーションが下がって休暇を取っている可能性も捨てきれません。いずれにしろ、退職の予兆として注意が必要です。
また、残業や休日出勤をしないように調整し始めた場合も退職が近いかもしれません。観察して適切に対処しましょう。
会社への不満や愚痴を言うようになる
仕事や会社全体に対する不満を言い始めるのも退職の予兆です。辞める決心をしている場合、上司や会社にどう思われても良いと考えて、これまでは我慢していた不満を口にすることもあるかもしれません。精神的に大きな変化が起きているおそれがあります。
積極的な姿勢がなくなる
仕事に対して消極的になり始めるのも退職の予兆です。与えられた仕事をこなすだけになり、新たな案件を取ってきたり、新しい業務に取り組んだりしなくなってしまいます。
またコミュニケーションにも消極的になる方もいるでしょう。退職を考えていることを周囲の方に悟られないように、あえてコミュニケーションを減らしている場合もあります。
評価や待遇を気にしなくなる
上司からの評価や待遇は、社員にとって関心が高い要素のひとつです。しかし、内示が発表される時期になっても昇進や昇給の話題に無関心であったり、評価を気にしなくなったりすると危険信号です。退職を決めているため、評価や待遇に関心がなくなっている可能性があります。
また、退職を決心した社員の中には、福利厚生や手当といった制度が変わっても興味を示さない方もいるかもしれません。そうした小さな兆候を見逃さないようにしましょう。
中堅社員が辞めてしまったときの対処法
中堅社員が辞めてしまったときはどのように対処すれば良いのでしょうか。
退職の理由をヒアリングする
退職が決まった際や手続き完了後に、退職のきっかけや理由についてヒアリングすることが重要です。同様の退職者を出さないためにも、会社に理由がある場合は改善を目指すのが得策でしょう。
また、ヒアリングする際は退職者を責めるのではなく、傾聴する姿勢を持つことが大切です。人事部に話しづらい場合は、人事コンサルタントに相談するのも良いでしょう。
残された社員の負担を軽減する
退職した中堅社員が多くの業務を担当していた場合、残った社員への業務割り振りには注意が必要です。退職した社員が抱えていた業務の難易度を考慮し、割り振られた社員が不満を感じないように配慮することが大切です。
退職の連鎖を避けるためにも、社員が過度な負担を感じていないか確認しながら進めましょう。
また、中堅社員の代わりとなる社員を新たに育成するには時間がかかります。業務を滞りなく進めるためには、派遣社員の雇用も検討してみましょう。また、フリーランスや副業人材の活用も有効な手段です。
中堅社員が会社を辞めないようにするための対処法
中堅社員が辞めていく環境は、会社にとって大きな問題であることがわかりました。会社にとっても、時間をかけて育成した人材の流出はできることなら防ぎたいところです。
しかし、どうしたらそのような問題に対処できるのかわからないと悩んでいる方も多いのではないでしょうか。
ここからは、中堅社員ができるだけ辞めないようにするための対処法について解説します。
仕事内容を見直す
キャリアアップや成長の機会を重要だと捉えている中堅社員にとって、仕事内容は重要なポイントです。
納得して働くことができるように、中堅社員が担う仕事内容を見直してみましょう。中堅社員はある程度の知識や経験、スキルがあるので、つい仕事を頼みがちになっていないでしょうか。
目の前の仕事に忙殺されていたり、ルーティンワークに追われていたりして、負担が大きく充実感や達成感をもてないという状態になっているかもしれません。
誰でもできるような仕事は減らして、やりがいを感じられるような仕事に集中できる環境をつくってみると良いでしょう。
成長する機会を与えるという意味でも、新しいことにチャレンジする時間をつくったり、責任のある仕事やポジションを任せたりしてみるのも良い方法です。
ライフスタイルを考慮した人員配置をする
社員のライフスタイルを考慮して人員を配置することも大切です。妊娠や出産にともない時短勤務が必要な社員には、残業や体力的負担の少ない部署への異動を視野に入れましょう。
また、育児や介護など家庭の事情を抱える社員は、在宅勤務を許可したり、在宅勤務が可能な業務へ変更したりする対応も重要です。ライフスタイルが変化しても両立できるよう、働きやすい環境を整えることを検討しましょう。
人事評価制度を整える
中堅社員はさまざまな仕事を任せられがちで、それに見合った評価が得られないと辞める決断につながってしまいます。
仕事への取り組みや貢献を適切に評価できるよう、人事評価制度を整えておきましょう。
仕事はお金がすべてではありませんが、昇給や昇格はそれまでの実績を認められた結果です。
きちんと評価されれば、仕事に対するやりがいやモチベーションも上がるでしょう。
人事評価制度を整えることは、中堅社員が辞めていくのを止めるためだけに必要なものではありません。
適切な評価をすることで社員全体のモチベーションアップにつながりますし、会社と社員の信頼関係も向上します。
社員が良い環境で働けるということは、生産性の向上によって会社の業績や顧客満足度が上がるというプラス面も期待できます。
人事評価制度の正しい作り方について詳しく知りたい方は下記の記事を参照してください。
キャリアプランを明確にする
人間関係や待遇面には特に問題がなかったとしても、「このまま続けていても良いのだろうか?」という不安を抱えている方は少なからずいます。そのような不安をもつ社員に対しては、このまま仕事を続けることで期待できるキャリアプランを明確に示すと良いでしょう。
一方的に説明するのではなく、定期的に面接などの話し合いをする機会を設けることが大切です。
どのような不安を感じているのか、どんなことに取り組んでいきたいのかなどをヒアリングし、この会社で働き続ける理由を明確にしていくと、モチベーションアップにつながります。
選択型研修を活用する
中堅社員が働きがい・やりがいを感じるには、キャリア開発が欠かせません。キャリア開発では、社員自身が自己実現に向かいながら、組織の期待に応えているのが理想的な状態です。
社員と組織の双方でキャリア開発を推進することをキャリア自律支援と呼び、その方法のひとつに選択型研修があります。選択型研修とは、社員それぞれが伸ばしたいスキルをもとに、学習テーマを選ぶ研修です。
東京・ビジネス・ラボラトリー(TBL)では、社員の心の成長=企業の成長と考え、心理学を活用した企業研修を提供しています。
プロの心理カウンセラーのもと、一人ひとりの資質を見出し、最もポテンシャルが発揮できる環境を作り出すためのアドバイスをしています。
詳しくはTBLの企業研修・セミナーをご覧ください。
コミュニケーションの機会を増やす
人間関係が原因で、社員が退職するケースは多いです。そのため、社員同士が良好な関係を築けるようにコミュニケーションの機会を増やしましょう。
良好な人間関係は、退職を防ぐのに効果的です。社内勉強会や親睦会などを企画し、社員同士のコミュニケーションを活発化させると良いでしょう。
中堅社員が成長できる環境を整える
中堅社員になると仕事に慣れてくるため、現状の業務に満足していない可能性があります。中堅社員が担当している業務量を減らし、やりがいのある仕事や新しい仕事を依頼して、成長できる環境を用意しましょう。
目標達成が難しいタスクを与えることにより、中堅社員も現在の会社で自分のキャリアを伸ばせると考え始められるようになります。
メンタルサポート体制を設ける
労働者が50人以上いる事業場では、年に1回すべての従業員に対するストレスチェックが義務付けられています。ストレスに関する相談窓口や、メンタルヘルスに取り組む部署を設置するのもひとつの方法です。
またメンタルヘルスのセミナーも近年注目されています。管理職向けの研修などを企画するのも良いでしょう。
福利厚生を充実させる
福利厚生の充実に取り組むのもおすすめです。社員から要望をヒアリングし、社員のニーズになるべく合う福利厚生を検討しましょう。ランチ代の補助や家賃の補助など、直接収入に関わることはもちろん、資格取得や研修の参加費の補助などもおすすめです。
プライベートでも活用できる、レジャーに関する福利厚生も人気です。テーマパークの入場料補助や宿泊施設の宿泊費の補助など、社員が楽しく過ごせる工夫を行いましょう。
会社が掲げる価値観を浸透させる
会社の理念やビジョンを社員全員の共通認識にすることも大切です。社員自ら会社の方針や理念に共感しなければ、モチベーションも上がりません。会社の理念に共感し、自分の役割を見出すことがモチベーションアップにつながります。
会社と社員の価値観が一致する部分があれば、仕事にやりがいをみつけることにもなります。やりがいがみつかれば、会社の業務へのやる気もアップするので、離職を考えることも少なくなるでしょう。
まとめ
スキルや知識、経験をもった中堅社員は、会社を支える重要な存在です。辞めていくことを簡単に止めることはできないかもしれませんが、中堅クラスの人材流出が続くと会社にとっては大きな痛手となってしまいます。
中堅社員に退職の兆候がみられたら、すぐに対処できる体制を整えることが大切です。そのためには、普段のコミュニケーションが欠かせません。
また、離職防止のために、福利厚生の充実や評価制度の見直しを中心とした対策を取り、社員のモチベーションを保つようサポートすることも必要です。
取り組み方次第では、中堅社員にさらなるやりがいをもって仕事を続けてもらうことも可能になります。
この記事で紹介したことも参考にして、社員がより充実して働ける環境づくりに取り組んでみてはいかがでしょうか。