管理職が辞める3つの主な原因
管理職の離職が相次ぐ会社には、いくつかの共通点があります。はじめに、特に代表的な3つの原因を紹介します。
現場の声が届かない組織風土がある
経営層が強いトップダウン体制の会社では、現場の意見が軽視されがちです。部下から寄せられる課題を吸い上げて経営に伝えても反応が鈍く、結局は経営陣の方針をそのまま現場に落とし込むだけの役割に終始するようになると、管理職は「自分の存在意義は何なのか」と疑問を抱きやすくなるものです。
特に、自ら問題意識をもって動いてきた管理職ほど、このような状況に強い失望を抱きやすくなります。そして、最終的には会社を見限ることになります。
評価制度や報酬体系に問題がある
管理職がいくら成果を出しても、それが正当に評価されない、あるいは報酬に反映されないというケースは少なくありません。評価基準が不透明で、何を達成すれば昇格・昇給につながるのかわからないような状態が続くと、キャリアの展望が描けず、転職を視野に入れるようになります。
特に、チーム単位で成果を出しているにもかかわらず個人の報酬に反映されない場合、管理職のモチベーションは大きく低下しやすいでしょう。
慢性的な人手不足の状態である
人員が足りない現場では、管理職自身がプレイヤーとして常に現場対応に追われることになります。マネジメントや育成に時間をかけたくても、実務に忙殺されてしまい、本来の役割が果たせません。加えて、有給休暇や連休が取りづらい環境が常態化していると、心身の疲弊が限界に達し、離職の決断を早めます。
会社側に人員不足を是正する意思や取り組みが見られないと、「この先も状況は改善されない」と感じ、結果として管理職の離職を後押ししてしまうことになります。
管理職が辞めるときの心理とは?
管理職が退職を決断するまでには、さまざまな心理的背景があります。ここでは、いくつかの代表的なパターンを掘り下げて紹介します。
長時間労働や激務で負担がかかっている
管理職は業務の最終責任者として、長時間労働が常態化しやすい立場です。会議や調整業務、突発的なトラブル対応などに追われて、自分の時間がほとんど持てない状況が続くと、「もう限界だ」と感じるようになり、仕事上のパフォーマンスはもちろん、モチベーションも低下してしまいます。
プレッシャーや強いストレスがある
業績目標、部下の管理、上層部との調整など、管理職にはさまざまなプレッシャーがのしかかります。特に十分な成果が出ていないときや、部下の問題が続く場合、精神的にいっそう追い詰められやすいでしょう。こうした環境が長期化すると、退職を検討するようになることもあります。
中間管理職のストレス事情については、こちらの記事でも詳しく解説しています。あわせてご覧ください。
「中間管理職のストレス事情とは?要因や減らすための取り組みを紹介」
部下へのマネジメントに対して不安を抱えている
マネジメントスキルを十分に習得しないまま管理職に就任すると、立場に見合った成果を十分に出せなかったり、部下との信頼関係が円滑に築かれなかったりといったことが原因で、チーム運営に悩むことが多くなります。また、そのような状況が長期的に続くと、やがて自信を喪失し、退職へと傾く要因になります。
関連記事:「部下のマネジメントに悩んでいる方必見!必要な能力とスキルアップ方法」
給与や待遇へ不満を持っている
責任や業務量に対して、待遇が見合っていないと感じたとき、管理職が「これなら他社のほうが良い条件で働ける」と感じるのは何も不自然なことではありません。特に市場価値が高い人材ほど、他社への転職などを前提としたキャリアステップが選択肢に入りやすくなります。
社内の人間関係に問題を抱えている
管理職は、上司・同僚・部下と多層的な人間関係に気を配る必要があります。その中で、信頼関係が築けなかったり、孤立を感じたりすることで、精神的な疲弊が深まるケースもあります。
関連記事:「【管理職必見】職場の人間関係を悪化させる3つの原因を解説!」
自分のスキルや能力を活かせていないと感じている
管理職になったことで、得意な専門分野から離れ、管理業務に専念せざるを得なくなるケースがあります。こうした状況が続くと、自分の価値を見失い、仕事への情熱を失ってしまうこともあります。
プライベートの時間が不足している
休日出勤や突発対応が多く、家庭や趣味の時間を犠牲にせざるを得ない環境は、長期的に見れば健康リスクやモチベーション低下を招きます。結果として、プライベートを重視したり、ワークライフバランスを最適化したりするための現実的な選択肢として、退職を選ぶ管理職もいます。
会社の方針や価値観に賛成できない
企業理念や方針に共感できないため、自分自身の価値観と会社の方針のギャップに苦しむ管理職も多いでしょう。特に、従業員に方針を説明する立場にある以上、自分の価値観と乖離があると心の負担は大きくなり、やはり離職につながりやすくなります。
将来に対して不安を抱えている
昇進後のキャリアパスが曖昧であったり、さらなる成長の機会がなかなか提供されなかったりすると、「このままで良いのか?」という不安が芽生えるものです。特に成長意欲が高い管理職ほど、新たな環境を求めて退職に踏み切る可能性が大きくなります。
管理職の退職が及ぼす影響は大きい
管理職の離職は、一個人の問題にとどまりません。下記のような大きな影響が組織全体に波及します。
・チームの士気が下がり、モチベーションの低下を招く
・管理機能が一時的に止まり、業務が滞る
・後任の選定や育成に時間がかかる
・顧客や取引先との信頼関係が揺らぐ
・他の社員の離職を誘発する連鎖が起こる
つまり、管理職の退職は「組織の安定性」に直結する重大なリスクなのです。
管理職が辞めるのを防ぐ方法
では、管理職の離職を防ぐために、具体的にどのような施策が有効なのでしょうか。下記のような取り組みを検討すると良いでしょう。
ヒアリングや1on1面談を定期的に実施する
日常的に対話の機会を設けることで、管理職が抱える不満や悩みを早期に察知できます。形だけの面談で終わらせず、経営層や人事が傾聴する姿勢を持つことが大切です。
関連記事:「1on1で「話すことがない」と部下に言われたら?|原因と対応を紹介」
経営層とのコミュニケーションの機会を増やす
定期的なオフサイトミーティングや懇親会を開催し、経営層との対話のハードルを下げるのも有効です。社内SNSやチャットツールなどを活用しましょう。管理職が経営に近い場所で発言できることは、モチベーションの維持に大きく貢献します。
労働環境や業務量を改善する
業務プロセスの見直し、デジタルツールの活用、人員の適正配置などで負担を軽減しましょう。休暇取得を促進する文化・習慣づくりも欠かせません。
評価と報酬を適切に設定する
納得感のある評価制度を設計し、定期的にフィードバックを実施するのも大切です。報酬制度についても、多様な形(インセンティブ、株式報酬等)を検討し、成果に対する見返りを明確にしましょう。
管理職を対象にした研修を実施する
マネジメントスキルを高める研修の機会を定期的に提供するのはとても効果的です。「東京・ビジネス・ラボラトリー(TBL)」では、企業ごとの課題や方針を丁寧にヒアリングし、世界基準の手法をベースにした最適な研修をご提案しています。詳しくは「東京・ビジネス・ラボラトリー(TBL)の管理職研修」をご覧ください。
関連記事:「管理職研修の内容は?主な4つの種類と実施する際のポイントを解説」
まとめ
管理職が辞める背景には、制度や風土、業務負荷、キャリアの不安など、さまざまな要因が絡み合っています。そのままにしておけば、企業の生産性や組織力の低下を招いてしまうでしょう。
今こそ、人事担当者として「管理職の声」に耳を傾け、評価・待遇・環境・育成すべてにおいて、見直しを進めるべきタイミングです。その一環として、管理職向けの研修の導入は、有効な一手となるでしょう。
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