目次
ジェンダーハラスメントとは?

まずは、ジェンダーハラスメントの定義とセクシュアルハラスメントとの違いについて解説します。
ジェンダーハラスメントの定義
ジェンダーハラスメントとは、性別による役割分担意識の固定観念に基づく冗談やからかい、差別や嫌がらせ、強要を含むハラスメントや差別的言動を指します。
「男性だから力仕事をすべき」「女性なのだから細やかな気配りができて当然」など、固定観念に基づいた言動が典型例です。性別による役割を決めつけたり、性別を理由に不当な扱いをしたりする行為全般が該当します。
また、LGBTQ+など性的マイノリティに対する差別的な発言や態度もジェンダーハラスメントに含まれます。本人が不快に感じるかどうかだけでなく、性別に基づく固定観念や偏見が根底にあるかどうかが判断の基準となります。
セクシュアルハラスメントの違いとは?
セクシュアルハラスメントは、身体に触れる、性的な冗談を言う、交際を迫るなど、性的な内容を含む言動が対象です。
一方、ジェンダーハラスメントは性的な要素がなくても、性別に関する固定観念や役割分担意識に基づいた言動であれば該当します。性的な内容を含まなくても、性別による役割を押し付けている言動はジェンダーハラスメントとなります。
両者は重なる部分もありますが、ジェンダーハラスメントの方がより広い概念として捉えられています。
ジェンダーハラスメントが起こりやすい職場の特徴

次は、どのような職場でジェンダーハラスメントが起こりやすいのか、具体的に見ていきましょう。
ジェンダーに対する意識の差
世代間でジェンダーに対する認識に大きなギャップがある職場では、ジェンダーハラスメントが発生しやすくなります。
性別による役割分担の意識が強く残っている世代と、多様性を重視する新しい世代との間では、何気ない言動への受け止め方が大きく異なります。
年配の社員が「女性らしさ」「男性らしさ」を当然のものとして発言しても、若い世代にとっては不快なハラスメントと感じられるケースは少なくありません。
また、LGBTQ+など性的マイノリティへの理解度にも世代差があり、無意識のうちに配慮を欠いた発言がされることもあります。
従業員の男女の割合の偏り
従業員の性別構成に偏りがある職場では、少数派の性別に対するハラスメントが起こりやすい傾向があります。
男性が多い部署や女性が多い環境では、少数派の異性が固定観念に基づく性別役割を強い押し付けられることがあります。
例えば、男性が大半を占める職場で女性が「お茶汲み」などの役割を当然のように任される場合があります。一方、女性が多い職場では、男性が力仕事を担当させられることがあるようです。
また、管理職の性別に偏りがあると、昇進や昇給の機会に不公平が生じ、特定の性別への配慮が欠ける傾向も見られます。
ジェンダーハラスメントの具体例

ジェンダーハラスメントは日常の言動に紛れやすく、気付かないうちに行ってしまうこともあります。どのような行為が該当するのか、主な例を見ていきましょう。
性差別的な言動をする
性別による固定観念や先入観に基づく発言・態度はジェンダーハラスメントです。「女性なのに管理職を目指すの?」「男なんだから泣くな」などの否定的な発言、「女性は感情的」「男性なら無理が効く」などの決めつけも該当します。
「女性らしい」「男性らしい」といった価値観の押し付けも相手を不快にさせる可能性があります。
仕事の割り振りを性別で決める
性別を理由に仕事配分を変える行為も問題です。「力仕事は男性」「受付は女性」など、性別を基準にした判断は不適切です。会議準備を女性だけに任せる、重要案件に男性ばかりをアサインするなども該当します。
「女性は海外出張が大変だろう」と本人の意思を確認せず機会を奪う、「男性なら残業できるはず」と決めつけることも問題です。業務は性別ではなく能力や希望に基づいて配分する必要があります。
性別によるキャリア・昇進差別をする
「女性は結婚で辞めるから重要ポストに就けない」「男性を優先して管理職に育成する」などは明確な差別です。出産・育児を理由に昇進機会を与えない、「いつ結婚するの?」「子どもの予定は?」と性別前提で質問する行為も問題となります。
男性に対して「育休を取るの?」「家族のために出世すべき」と決めつけることもハラスメントです。性別ではなく、本人の能力や意欲に基づくキャリア支援が求められます。
性的マイノリティへの差別的言動をする
LGBTQ+など性的マイノリティに対する蔑称の使用、揶揄する冗談、性自認の否定はハラスメントです。同意なく性的指向や性自認を暴露する「アウティング」も深刻な行為に該当します。
「普通じゃない」「気持ち悪い」などの発言はもちろん、好奇の目で見る態度も相手を傷つけます。理解不足からの無配慮な言動にも注意が必要で、職場では多様な性のあり方を尊重する姿勢が欠かせません。
ジェンダーハラスメントの対応策
ジェンダーハラスメントを防止し、発生時に適切に対処するには、組織としての取り組みが欠かせません。ここでは、主な対応策を紹介します。
対応方針の策定と周知
ハラスメントガイドラインにジェンダーハラスメントの範囲や具体例、禁止事項、処分基準を明確に盛り込みます。また、多様性への理解を促す情報発信を行い、社員に考え方を浸透させることが重要です。
イントラ掲載・ポスター掲示・定期メール配信など複数手段で繰り返し周知し、経営層が率先してメッセージを示すことで、全社的な意識向上につながります。
社内教育や研修の実施
ジェンダーハラスメントへの理解を深めるため、全従業員向け研修を定期的に実施し、定義・事例・法的責任を学びます。管理職には、部下指導時の注意点や発生時の対応など専門的内容も加えます。
研修後の理解度テストで知識の定着を確認することも有効です。
相談窓口の設
法令に基づき相談窓口を社内外に設置し、その存在を広く周知します。被害者が安心して相談できるよう、プライバシー保護と相談による不利益禁止を明示します。外部専門機関と連携し、相談経路を増やすのも有効です。
窓口担当者には専門的対応ができるよう適切な訓練を行い、定期的に利用方法を周知して、困ったときにすぐアクセスできる体制を整えます。
ハラスメント発生した際の対応フローの作成
ハラスメント発生時に迅速かつ適切に対応できるよう、明確な対応フローを整備しておく必要があります。
【対応フローの例】
1.相談窓口で被害者からヒアリングを行い、事実関係を丁寧に確認する
2.加害者とされる人物や関係者から聞き取りを行い、客観的な事実を把握する
3.調査結果に基づきハラスメントの有無を判定する
4.該当する場合は就業規則に従って懲戒処分などの措置を講じる
5.被害者のメンタルケアや職場環境の改善を実施する
6.再発防止策を検討し、全社に共有して同様の問題を防ぐ
また、フローを文書化し、関係者全員が理解しておくことが重要です。
まとめ
ジェンダーハラスメントは、性別役割分担意識に基づく差別的な言動であり、職場環境を悪化させる深刻な問題です。世代間の意識の差や従業員の性別構成の偏りがある職場では特に発生しやすく、性差別的な発言やキャリア形成における差別、性的マイノリティへの配慮のない言動など、さまざまな形で現れます。
ジェンダーハラスメントを防止するには、明確なガイドラインの策定と周知、定期的な研修の実施、相談窓口の設置、そして発生時の対応フローの整備が不可欠です。
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