ぶら下がり社員とは

ぶら下がり社員とは、与えられた仕事のみをこなし、自ら積極的に行動しない社員のことです。退職する意志はないものの、会社に貢献する意欲が見られず必要最低限の仕事しかしないため、能力があっても戦力としては期待できません。
また、意欲や向上心が見られないため、マネジメントが行いづらい状況です。チームワークにも悪影響を与えやすく、組織の成長を阻害する要因にもなります。
ぶら下がり社員に関連した用語
ぶら下がり社員を知る上で混同されやすい用語について解説します。それぞれの違いを知り、ぶら下がり社員についての理解を深めましょう。
フリーライダー
フリーライダーとは他人の成果に便乗し、あたかも自分の成果のように見せる社員のことです。サボり癖があり、いかに仕事をせずに成果をあげるかを考えています。自分自身の見せ方がうまく、まわりからは実力以上に評価される傾向があります。
ローパフォーマー
ローパフォーマーとはやる気や意欲があっても、もともと備わっている能力が低く頑張っても生産性が上がりにくい社員のことです。実力が伴わないだけなので、経験を積みスキルアップを目指すことで今後成長する可能性があります。
2-6-2の法則
組織全体を俯瞰して見た場合、2-6-2の法則が当てはまることが多いといわれています。この法則によると、どんな組織も「ハイパフォーマーが2割」「一般的な業務遂行能力がある社員が6割」「ローパフォーマーが2割」の割合で社員が分かれてしまうとされています。
ぶら下がり社員が生まれる背景・要因

ぶら下がり社員が生まれるのは、個人の資質だけでなく、組織環境や時代背景も大きく影響しています。ここでは、ぶら下がり社員が生まれる主な背景や要因について解説します。
VUCA時代ゆえの不安
VUCA(ブーカ)時代とは、先行きが不透明で変化の激しい時代を指します。AIの台頭により自分の仕事が代替できてしまえば、存在価値がなくなってしまうのではないかと不安になる社員もいるでしょう。
長年かけて積み上げてきた知識やスキルが通用しなくなるかもしれないと思うと、積極的に新しいことにチャレンジしようという意欲が湧きにくいものです。
仕事や組織に変化が少ない
変化に乏しく、安定した組織であるがゆえにぶら下がり社員になってしまうケースもあります。仕事が分業化しすぎていることも原因のひとつといえるでしょう。簡単な業務に慣れてくると目標を見失いやすく、モチベーションの維持も難しくなります。
キャリアパスの先行きが見えない
キャリアパスが明確でない組織は、ぶら下がり社員が多くなりがちです。キャリアアップの可能性がなくなるとチャレンジ精神が芽生えにくくなり、働く意欲を失ってしまいがちです。そのため、ただ与えられた仕事をこなすだけの守りの姿勢に陥りやすくなります。
責任が曖昧
組織内で目標や役割が明確でない場合、社員一人ひとりが自分の業務範囲や責任を把握しにくくなります。その結果、「自分がやらなくても誰かがやるだろう」という受け身の姿勢が生まれやすく、ぶら下がり社員を生む原因となります。
また、成果の責任がチーム全体に分散されていると、努力しても正当に評価されないと感じる社員が増え、モチベーションの低下につながることもあります。
待遇が良い
特に大企業では、努力しなくても一定の給与や休暇が保証される環境が整っていることがあります。
そのような職場では、生活が安定しているために「頑張る必要性」を感じにくくなり、現状維持を選ぶ社員が増える傾向にあります。
また、働かなくても職場の雰囲気が穏やかで居心地が良い場合、自ら辞める理由もなく、惰性で勤務を続ける状態になりなりやすくなります。
終身雇用制度
日本独自の終身雇用制度も、ぶら下がり社員が生まれる要因のひとつです。
かつては「一度入社すれば定年まで安泰」といった前提が強く、勤続年数が長ければ自動的に昇給・昇進するケースも多く見られました。
しかし現在では、こうした制度が見直されつつあり、成果や能力に応じた実力主義の人事制度へと移行する企業が増えています。このような変化に十分に適応できない社員の中には、従来の安定志向にとどまり、自発的な成長意欲を持ちにくくなるケースもあります。
その結果、業務に対する積極性を欠いた「ぶら下がり」の状態に陥ることがあります。
ぶら下がり社員の特徴

ぶら下がり社員は仕事のパフォーマンスは低いものの、勤務態度が極端に悪いというわけではありません。ここでは、ぶら下がり社員の特徴を解説します。
出世意欲がない
ぶら下がり社員は、与えられた仕事だけをこなす傾向が強く、自発的な行動や責任を避けがちです。
「余計なことをして失敗したくない」「現状を維持できれば十分」という意識が強く、仕事に対して消極的な姿勢が見られます。
また、過去に出世競争で敗れたり、努力が報われなかったりする経験があることで、挑戦する意欲を失っている場合もあります。出世することで責任や業務が増えることを負担に感じ、「今のままで良い」と考えてしまう傾向もあります。
仕事とプライベートを割り切っている
現代では、仕事よりもプライベートを優先し、社内での人間関係や業務以外の関わりをできるだけ控えたいと考える人も増えています。
残業や休日出勤といった勤務時間外の業務には消極的で、ワークライフバランスを重視する姿勢が見られます。
私生活を大切にすることは重要ですが、仕事への関与度が低くなりすぎると、周囲との協働や成果への貢献意識が希薄になる場合もあります。その結果として、組織内で「ぶら下がり社員」と見なされることがあるかもしれません。
自己肯定感が低い
ぶら下がり社員は、上司から褒められたり、評価されたりする経験が少なく、努力が報われた実感が乏しいため、自己肯定感が低い傾向があります。
自分に自信がなく、「頑張っても報われない」と感じてしまい、仕事へのモチベーションを維持できません。
また、周囲からの評価が低いと、さらに自分を過小評価してしまい、自分の意見を言えず受け身の姿勢に陥りやすくなります。
このような心理状態が続くことで、新しいことに挑戦する意欲が失われ、結果的に組織の中で停滞してしまうのです。
環境の変化に対応できない
ぶら下がり社員は指示されたことはそつなくこなしますが、周囲の環境を察知して柔軟に対応することが苦手です。
新規事業の立ち上げや未経験分野への挑戦などを求められても、回避しようとします。柔軟性に欠けるため組織改革などが行われても、適応することが困難です。
ミドル・シニア層に多い
長年キャリアを形成してきた社員は、知識や経験が豊富なので必要最低限の仕事はそれなりにできます。しかし、出世競争からの脱落がきっかけとなり、働く意欲を失ってしまうことがあるのです。
ミドル・シニア層の社員の多くは、出世が望めない年齢に差し掛かるため、やる気を喪失しがちです。このまま勤めていても大幅な出世や待遇の向上は見込めないと考え、あきらめてしまう傾向がみられます。
ぶら下がり社員?10のチェックポイント

ぶら下がり社員を早期に見極めることで、組織全体の生産性低下を防ぐことができます。以下の10のチェックポイントを参考に、自社に該当する社員がいないかを確認してみましょう。
1.指示待ちが多い
自分で判断せず、上司や同僚の指示がないと動けないタイプです。主体性に欠けるため、周囲のサポートがなければ仕事が進みません。
2.新しいことに挑戦しない
慣れた業務だけを続け、未知の仕事や改善提案には消極的です。「失敗したくない」「面倒なことは避けたい」という意識が強く、現状維持を好む傾向があります。
3.責任のある仕事を避ける
リーダーや担当者など、責任を伴う業務を任されることを嫌がります。トラブルやミスを恐れ、「目立たずにやり過ごしたい」という姿勢が見られます。
4.学ぶ意欲がない
スキルアップや資格取得への関心が薄く、研修や勉強会にも積極的に参加しません。現状の知識で十分だと考えてしまい、成長意欲が乏しい状態です。
5.仕事への熱意が感じられない
与えられた仕事をこなすだけで、自分から提案や改善をしようとしません。仕事の成果よりも「ミスをしないこと」に意識が向いているのが特徴です。
6.職場の人間関係に無関心
周囲とのコミュニケーションを最小限に留め、雑談や協力関係の構築を避けます。チームワークへの貢献よりも個人プレーを優先し、孤立しやすい傾向があります。
7.ネガティブな発言が多い
「どうせうまくいかない」「頑張っても報われない」など、否定的な言葉が多く見られます。周囲のモチベーションにも悪影響を与えやすいタイプです。
8.評価に無関心
昇進や評価に対して興味を示さず、「どんなに頑張っても給料は変わらない」と割り切ってしまっています。自分の成長よりも安定を重視しています。
9.業務改善に協力しない
職場の改善提案や新しい仕組みづくりに対して、「今のままで良い」と非協力的な態度をとります。変化を嫌い、既存のやり方に固執する傾向があります。
10.プライベート優先の姿勢が強い
仕事とプライベートを完全に分け、残業や休日出勤は極力避けたいと考えます。ワークライフバランスを重視しすぎるあまり、職務への関心が薄れてしまうことがあります。
ぶら下がり社員を減らす対策

ぶら下がり社員を増やさないようにするために、組織全体で取り組むべき課題を見つけることが重要です。ここでは、ぶら下がり社員を減らすための対策を紹介します。
人事評価制度を改善する
人事評価制度を見直して公平に評価できるようになると、社員のモチベーションも上がりやすくなります。
業績への貢献度や能力、仕事に取り組む姿勢など、多角的に評価することがポイントです。定期的な面談などを実施しフィードバックを行うことで、ぶら下がり社員の意識にも変化がみられる場合があります。
人事評価の作り方について、詳しくはこちらの記事をご覧ください。
ジョブローテーションを実施する
適度なジョブローテーションを実施すると、気持ちが引き締まりやすくなります。環境や役割を変えることは、ぶら下がり社員にとって良い刺激になるでしょう。さまざまな仕事を経験すると、仕事の全体像の把握にも役立ちます。
社内公募制度を導入する
新しいことに挑戦しやすい環境を整えてあげることもポイントです。社内公募制度などを導入し、自由に意見を伝えられる場所を作ると良いでしょう。新たなキャリア形成にもつながるため、優秀な人材の流出を防ぎやすくなります。
多様なキャリアパスを設計する
働き方が多様化するなか、キャリアパスやキャリアへの向き合い方を提示することも大切です。出世競争から外れてしまった場合でも、違う道を示してあげることで、ぶら下がり社員のやる気アップにつながります。
また、勤務時間を柔軟に調整できる制度があれば、家庭の事情で短時間しか働けない社員でも勤務しやすくなり、ぶら下がり社員の発生を防ぎやすくなるでしょう。
上司と部下間で信頼関係を築く
上司との信頼関係が構築できていると、ぶら下がり社員の発生を防ぎやすくなります。ぶら下がり社員は組織に対する不満がある場合が多いので、じっくりと話を聴き解決策を一緒に探してあげるのが有効です。
コーチングの技術を活用すると、本人でも気付いていない不安に意識が向くようになり、自己解決に導きやすくなります。
他にもこまめな声かけを心がけると、社員との関係を良好に保ちやすくなります。社員同士の交流の機会を設けるのもおすすめです。
研修・セミナーを実施する
ぶら下がり社員の意識を変えるために、仕事上のマインドセットやキャリアアップに関する研修やセミナーを実施するのもひとつの方法です。
また社員だけでなく管理職の育成も重要です。研修に参加しながら理解を深めることで、社員の気持ちに寄り添いながら改善へと導けるようになるでしょう。
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まとめ
ぶら下がり社員になるきっかけは、組織への不満や不透明な未来に対する不安などさまざまです。ぶら下がり社員は仕事に消極的で、向上心がみられないなどの特徴があります。
職場にこのような社員が増えると、組織の生産性や組織力の低下などにつながるおそれがあるため注意が必要です。今回紹介した対処法を参考にしながら、改善できることから取り組みましょう。



