目次
社内アンケートの目的
まずは社内アンケートを実施する目的を整理しましょう。
社内の諸制度を見直すため
社内アンケートを通じて、現在の社内制度や規則が従業員にどのような影響を与えているかを評価できます。また、従業員の意見や要望を反映させることで、より効果的で柔軟な制度へと改革する方向性を見出すことが可能です。
例えば、福利厚生制度の再設計や働き方改革などのヒントになります。
業務内容や職場環境を見直すため
社内アンケートを実施することで、業務内容や職場環境の現状を正確に把握できます。例えば、業務の負担や職場の人間関係、設備面での不満など、日々の仕事のなかで感じている改善点を収集できます。
アンケートを通じて、従業員が働きやすい環境を整えるための具体的な施策を検討できるでしょう。
組織力の強化を図るため
社内アンケートは、組織力を高めるのにも効果を発揮します。内部の課題や強みを理解することが、組織の成長には欠かせないためです。
アンケートを通じて、チームワークやコミュニケーションの改善に役立つ情報を収集できます。例えば、部署間の連携不足や情報共有の問題などです。こうした情報を活用することで、組織の一体感を高めるための改善策を講じることが可能です。
組織の風土やカルチャーを見直すため
社内アンケートは、組織の風土や文化が従業員の行動や意識に与える影響を把握できます。アンケート結果を分析し、望ましい組織文化を構築するための具体的なアクションプランを策定できるでしょう。
例えば、社員の意見を反映させることで、より開かれたコミュニケーションを促進したり、社員同士の協力を強化するための施策を打ち出せたりします。
社内アンケートで本音が引き出せない理由
社内アンケートを実施する際、従業員から本音を引き出すことが難しい場合があります。ここではその理由をいくつか紹介します。
理由1|本当に匿名で実施されているのか信用がないため
社内アンケートが匿名と説明されていても、従業員は本当に匿名であるかどうかに対して不安を抱くことがあります。特に、後で個人が特定される可能性や、回答内容が人事評価に影響を与えるのではないかという懸念があると、正直な意見を控えてしまうことが多いのです。
理由2|以前実施されたものの何も反映されなかったため
過去に実施された社内アンケートで従業員の意見が無視され、改善がなされなかった場合、次回のアンケートに対しても懐疑的な姿勢が強くなります。アンケート結果が企業の改善に役立たないと感じると、本音を伝えること自体が無意味に感じられるためです。
理由3|そもそも質問の設計自体が悪いため
質問の設計に問題がある場合も本音を引き出せない理由のひとつです。質問が曖昧であったり、回答者の実際の感情や意見を反映できない形式であったりすると、従業員は本音を話しにくくなります。
また、質問が偏っていると、従業員は自分の意見が正確に反映されないと感じ、本音を避ける傾向があります。例えば、「この職場環境に満足していますか?」という質問は、満足か不満かの二択に限定されてしまい、従業員が感じている微妙な感情や意見が十分に表現されません。
理由4|アンケートの利用目的が明確でないため
アンケートがどのように活用され、従業員の意見がどのように反映されるのかが不透明な場合も、従業員は本音を話すことに消極的になります。
理由5|アンケートへの回答に時間がかかるため
アンケートが長すぎる、または頻繁に実施されると、従業員はその回答に対して適切な時間と労力を割くことに消極的になります。
特に、忙しい業務の合間に時間を割いて回答しなければならないと感じると、回答内容が表面的になり、本音を反映させることが難しくなります。
社内アンケートで従業員の本音を引き出すためのコツ
アンケートで本音を引き出すためには、アンケートの設計や実施方法に工夫が必要です。ここでは、上記の理由を踏まえ、従業員が安心して本音を話せるようにするための具体的なコツを紹介します。
社内アンケートが匿名であることを強調する
従業員が本音を自由に表現するためには、アンケートが完全に匿名であることを強調することが大切です。匿名性が保証されることで、従業員は自分のキャリアや評価に悪影響を与える心配なく、正直な意見を述べやすくなります。
アンケートの導入部分で「すべての回答は匿名で集計されます」ということを明確に伝え、匿名性を徹底するためのシステムを整備することも重要です。
社内アンケートの実施目的と利用方法を明確にする
従業員がアンケートに対して真剣に回答するためには、その目的と結果の利用方法をしっかりと伝えることが欠かせません。アンケートが組織や自分自身にどう役立つのかを理解することで、従業員は自分の意見が反映されることに意義を感じ、積極的に意見を出すようになります。
フィードバックの受け入れ姿勢を示すことで、従業員はより正直に、詳細な回答を提供するようになるでしょう。
質問内容に一部記述式を入れる
選択肢だけでなく、記述式の質問を取り入れることで、従業員が自分の考えを自由に表現できるようになります。自由記述式の質問は、従業員が感じている選択肢だけでは得られない詳細な意見を引き出すのに有効です。
しかし、記述式の回答は集計や分析に時間がかかるため、特に深掘りしたいテーマや重要な質問に限定して記述式を使うと良いでしょう。例えば、従業員が職場の改善点や上司に対するフィードバックを具体的に述べられるような質問を設けると、有益な情報を引き出すことができます。
社内の課題抽出につながる質問を作成する
アンケート質問の設計には、心理学や統計学的な知識が求められます。従業員の本音を引き出すためには、単に表面的な質問ではなく、深層にある問題や課題を掘り下げるような設計が必要です。
例えば、従業員の満足度や課題感を引き出すためには、具体的な改善点を示唆するような質問を取り入れたり、従業員が自己評価する形式の質問を入れたりすることで、課題の本質をより明確に把握できます。
自社でこのような質問を作成するのが難しい場合は、専門家に依頼するのもひとつの方法です。外部の専門家に相談することで、課題に即したより高精度な質問設計が可能になります。
東京・ビジネス・ラボラトリー(TBL)では、心理学のメソッドをもとに、社内のコミュニケーションやハラスメントなどの課題をテーマとした企業研修を実施しています。興味のある方はぜひご相談ください。
社内アンケートをWeb上で行う
Web上でアンケートを実施することで、従業員が気軽に参加しやすくなります。オンラインプラットフォームを活用することで、複数のデバイスからアンケートにアクセスできるため、時間や場所に制約されることなく回答しやすくなります。
さらに、集計作業が自動化されるため、データの分析も効率的に行える点が魅力です。
【例文付き】社内アンケートで本音を引き出すための質問の作り方
社内アンケートを実施する際、従業員の本音を引き出すためには、質問の設計が重要です。質問内容が曖昧だったり、誘導的であったりすると、回答者は本当の気持ちを隠してしまいがちです。そこで、正しい質問を作成するためのポイントをいくつか紹介します。
回答バイアスと正解バイアスに注意する
社内アンケートにおいては、回答者が自分の意見とは異なる回答をしてしまう「心理バイアス」や「正解バイアス」を避けることが重要です。心理バイアスとは、質問文が回答者の心理に影響を与えて、実際の本音を反映できないような現象を指します。
例えば、「あなたは職場の雰囲気が良いと思いますか?」という質問は、すでにポジティブな方向に誘導しているため、ネガティブな意見が出にくくなります。
また、正解バイアスは、従業員が自分に求められている回答を意識してしまい、本音と異なる回答をする現象です。例えば、「あなたは上司との関係が良好だと思いますか?」という質問に対して、「良好」と答えなければならないと感じる場合、実際の関係が悪くても正直に答えづらくなります。
上記のようなバイアスを避けるためには、質問をできるだけ中立的かつオープンにすることが重要です。
2つの要因理論を意識する
従業員の働きがいを決定する要因として、衛生要因と動機づけ要因の2つがあるとされています。この2つを意識して質問を設計することで、より本音に近い回答を得ることができます。
衛生要因:不満を抑制する要因
衛生要因は、給与水準や福利厚生、職場環境など、従業員が不満を感じないための基本的な要素です。
例えば、給与や労働条件について尋ねる質問は、衛生要因に関連します。「給与水準に満足していますか?」や「福利厚生に改善の余地があると感じますか?」といった質問で、従業員が不満を抱いている領域を把握できます。
動機づけ要因:満足を強化する要因
動機づけ要因は、仕事を通じての成長や社内評価、昇進など、従業員が満足感ややりがいを感じる要素です。これに関連する質問を設けることで、従業員がどのような要素にモチベーションを感じているか、逆に何が満足度に影響を与えているかを明確にできます。
「仕事の成果が正当に評価されていると感じますか?」や「仕事における成長実感がありますか?」といった質問が適しています。
社内アンケートで本音を引き出すための質問の例文
具体的な質問例をいくつか紹介します。これらを参考に、実際のアンケートを作成してみましょう。。
・「現在の職場環境に関して、不満を感じていることは何ですか?」
・「自分の成長を実感するために、どのようなサポートがあれば良いと思いますか?」
・「上司や同僚とのコミュニケーションで改善が必要だと感じる点はありますか?」
・「給与や福利厚生に関して、改善すべきだと感じることはありますか?」
社内アンケート回答項目の作り方
最後に、社内アンケートにおける効果的な回答項目の作り方を解説します。
リッカートスケールを利用する
リッカートスケールは、「まったく満足していない」から「非常に満足している」までの強弱がある設問形式です。リッカートスケールは回答者が自分の感情を細かく表現できるようになるほか、多くの方に馴染みがあり、回答しやすい特徴があります。満足度や意見の強さを明確にしやすく、全体の傾向を把握するのに役立ちます。
選択肢の数に注意する
選択肢の数は、5〜7つが最適とされています。少なすぎると選択肢が不十分で、逆に多すぎると回答者が選びきれなくなるかもしれません。また、選択肢の数は偶数ではなく奇数にすることで、中央の選択肢が設けられ、回答者が「どちらでもない」という選択肢を選びやすくなります。これにより心理的負担を軽減し、より正直な回答を得られます。
中央値の選択肢を工夫する
ただし、中央値があまりに簡単に選ばれるようでは、本音の回答を引き出すことができません。回答者が中立的な選択肢を安易に選ぶことを避けるためには、中央値の表現を工夫することが重要です。
例えば、「どちらでもない」や「普通」といった表現が曖昧であると、回答者が逃げ道として使ってしまうことがあるのです。そのため、質問文自体を具体的にして、どちらかに傾きやすくするように設計することが求められます。
まとめ
社内アンケートは、従業員の意見を直接収集する貴重な手段であり、企業の改善や組織の強化に役立ちます。ぜひ今回の記事を参考に、社内アンケートを活用し、職場環境や業務の質向上を目指してください。
そのほか、従業員のコミュニケーションや心の病、ハラスメント問題などでお悩みなら、東京・ビジネス・ラボラトリー(TBL)にご相談ください。経営者プラン・管理職プラン・社員プランなど多様なプランを用意しており、プロの心理カウンセラーが課題解決をサポートします。詳細は下記からご確認ください。