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中堅社員とは企業の中心的役割を担う人材層
中堅社員とは、入社3年目以降の20代後半から30代で役職に就いていない層を指し、企業によっては「入社3~10年目」や「30代社員」と定義されることもあります。
彼らは業務を自律的にこなすだけでなく、新人育成や管理職との橋渡しなど多面的な役割を担います。現場の即戦力として成果を出しつつ、知識や経験を次世代へ伝える重要な存在です。
そのため、中堅社員のやる気低下や離職は組織全体の停滞や成長戦略への悪影響につながります。専門性・経験・調整力を持つ彼らは、企業の競争力を支える基盤なのです。
中堅社員のモチベーションが低下する原因
中堅社員のモチベーションを低下させる、主な原因は何でしょうか。原因について知り、中堅社員のモチベーションの維持や向上に役立てましょう。
仕事がマンネリ化している
まず、仕事のマンネリ化によるモチベーションの低下があげられます。
中堅社員は一人で業務を遂行でき、自身で仕事のスタイルを確立しているケースが多いでしょう。余裕をもって仕事ができる反面、代わり映えのしない業務が続くと面白みややりがいを失ってしまうリスクがあります。
さらに、人材が停滞している企業では10年以上のキャリアがあってもなかなか昇進できない場合も少なくありません。仕事のマンネリ化とあわせて、キャリアアップのしづらさがモチベーションの低下を招いている可能性もあります。
業務が集中して疲労が溜まっている
次に、業務が集中して疲労が蓄積してしまい、モチベーションが下がってしまうケースです。
中堅社員は、上司と部下の間で業務や人間関係などを調整する橋渡しの役割を期待されます。上司からは業務の中核を担うよう求められるため、自ずと業務が集中してしまいやすいポジションといえるでしょう。
業務が集中してしまうと常に忙しい状態が続き、結果的に疲労の蓄積と精神の疲弊でモチベーションの低下を招きます。また、新人教育も任されるのも中堅社員が多く、自身の仕事だけに集中できない点もモチベーションを下げる要因になるでしょう。
今の報酬や環境にモヤモヤを感じている
中堅社員は組織内での責任が増大し、業務量も大幅に増加する一方で、それに見合った給料や待遇の向上を実感できない場合が多々あります。
新人の頃と比較して明らかに高いパフォーマンスを発揮し、重要な役割を担っているにも関わらず、報酬面での変化が少ないと感じることで、強い不公平感を抱くようになります。
特に、同世代の他社社員や転職市場での待遇と比較したときに、自分の現在の処遇が適正でないと感じる場合、その不満は深刻なものとなります。また、昇進の機会が限定的であったり、評価制度が不透明であったりする環境では、自分の努力や成果が正当に評価されていないと受け止めることになります。
結果として、より良い条件を求めて転職を検討する中堅社員が増加する傾向にあります。
手本となる上司や先輩がいない
尊敬できる上司や先輩がいない職場では、中堅社員が将来への道筋を見つけにくく、ストレスや不安を抱えやすくなります。
上司や先輩が専門性に欠けていたり、リーダーシップを発揮できていなかったりする場合、中堅社員は「この組織で成長できるのか」「こんな上司になりたくない」と疑問や失望を感じることがあります。
その結果、将来像が描けず、仕事への意欲や目標設定の動機が削がれ、モチベーション低下ややりがいの喪失につながります。最終的には離職を検討する要因となることも少なくありません。
キャリアへの不安を感じている
自分のキャリアに対する不安も、モチベーション低下につながります。新人や若手社員と呼ばれている間は目の前の業務を覚えるのに必死で、周囲の状況や将来像まで考える余裕がないものです。
しかし、入社からそれなりの期間が経ってある程度のスキルが身に付くと、多くの人は次のキャリアについて考え始めます。
このときに上司や社内の状況から将来像を想像した結果、キャリアの展望が見えないと感じると、「この会社に居続けて大丈夫か」と思うようになりモチベーションが低下します。
モチベーションが低下した社員の特徴
仕事のモチベーションが低下した社員の特徴を紹介します。
モチベーションの低下が続くと、離職につながるおそれもあります。これらの特徴に当てはまる場合は、離職の兆候が現れているかもしれません。いち早く対応するためにも、それぞれの詳しい内容をみていきましょう。
不満などを言わなくなる
会社に対する不満は、多かれ少なかれ誰にでもあります。決して悪いものではなく「もっと職場を良くしたい」という問題意識から生まれる場合もあり、会社への期待も含まれた感情ともいえるでしょう。
そのため、ずっと不満を言い続けていた社員が突然言わなくなった場合は、危険信号であると疑った方が良いかもしれません。退職を決意した社員は、今の職場に対してポジティブな変化を求めなくなるケースが多いです。
「会社を良くしたい」や「上司に認められたい」といった気持ちがなくなり、不満すら言わなくなってしまいます。
ミスが目立つようになる
モチベーションが低下すると、業務上のミスが目立つようになります。「ここまでで良いか」と質を高めようとせずに仕事に臨むため、結果的に業務が雑になりがちです。
また、向上心も失い、より良くしようという姿勢が見られなくなるためミスが目立つようになります。これまで問題なく行えていた仕事でミスが増えている社員がいれば、モチベーションが下がっている可能性があるため注意しましょう。
仕事への自主性がなくなる
モチベーションが下がると仕事への自主性も失います。特に、会議やミーティングの場で発言をしなくなっている場合は注意が必要です。
「何を言っても変わらない」とポジティブな変化を期待していない兆候であり、職場内での存在感を徐々に消していることが考えられます。
また、自分の仕事を後輩に任せたり、業務を引き継ごうとしていたりしている場合も自主性がなくなっている兆候といえるでしょう。自分がいない状況でも仕事が回るように調整して、離職を考えている可能性があります。
中堅社員のモチベーションが低下することで起こりうるリスク
中堅社員のモチベーションが低下すると、社内でさまざまな問題が発生する可能性があります。どのような問題が起こるリスクがあるのか、詳しくみていきましょう。
離職者が増加する
中堅社員のモチベーションが低下すると、離職者が増加するリスクがあります。「この会社に居てもこの先のキャリアが見えない」と感じているときに、より条件の良い企業を見つけたら、多くの人はそのまま転職してしまうからです。
自分と同じような立場の社員が転職したことに触発されて、中堅社員が一気に他社に流出するケースも少なくありません。転職した中堅社員が人望の厚い人物だった場合、その人物を慕っていた同僚や若手、新入社員まで退職してしまうおそれもあります。
さらに一気に人員が減った結果、残された社員の負担が激増して、その社員たちも辞めてしまう負のスパイラルに陥る可能性があります。
職場の人間関係が悪化するおそれがある
中堅社員は管理職と若手の緩衝役となる存在です。例えば、管理職が若手を叱責したときに、中堅社員が相談に乗ったりフォローを入れたりして両者の仲を取り持つと、相互理解が深まり良い方向に進む場合があります。
反対に、若手の不満や提案を中堅社員がまとめ上げて管理職に伝え、早期離職を防いだり業務効率化を実現したりするケースもあります。
しかし、モチベーションが低下している中堅社員は、時間と気力を使う緩衝役をわざわざ担おうとはしないでしょう。
こうして緩衝役がいなくなると、職場内の人間関係が悪化するおそれがあります。また、人間関係が良くない職場は情報共有が滞りやすいため、さまざまなトラブルが発生するリスクもあります。
ノウハウやナレッジが継承されない
入社からある程度の期間が経ち、それなりの知識やスキルを身に付けた中堅社員は、そのノウハウやナレッジ(知識・知見)を次の世代に伝えていく役目も担っています。
そんな中堅社員のモチベーションが低下し、最低限の業務しかこなさなくなったり転職してしまったりすると、重要なノウハウやナレッジが継承されなくなります。
事業が停滞する
中堅社員は社内の人間関係の構築やノウハウの継承に欠かせない人材です。実業務においても、スキルがあり即戦力として動ける中堅社員は、成果の中核を担っています。
企業にとって重要なプレイヤーである中堅社員のモチベーションが低下すれば、業務全体の質も効率も大幅に下がるでしょう。その結果、これまでのような成果が得られなくなり、事業そのものが停滞するリスクがあります。
中堅社員のモチベーションを向上させる方法
中堅社員のモチベーションを維持、向上させるには、業務上で適度なストレスや変化を持たせるようにマネジメントする必要があります。また、精神的に落ち込んでしまった場合は外部の研修も有効な手段であるため、参考にしてみてください。
まったく異なる業務を割り振る
モチベーションを向上させるには、まったく異なる業務を割り振ってみるのが効果的です。代わり映えのしない業務を日々こなすだけでは、慣れからくるマンネリを感じてしまっても無理はありません。
そのため、仕事がマンネリ化してモチベーションが上がっていない場合は、これまでの仕事とはまったく別の仕事を振ってみましょう。環境や業務が変われば、新鮮な気持ちで仕事に取り組めます。
また、普段は行わない業務で得られた経験は、今後のキャリアを考える助けとなるでしょう。
自分の適性を見極める機会となり、職場においての自身の立ち位置を知るきっかけにもなります。
モチベーションが下がっているようにみられる場合は、積極的に普段と異なる業務を振ってみてください。
労働環境を整備する
労働環境を整備するのも、中堅社員のモチベーションアップに役立ちます。中堅社員はプレイヤーかつ緩衝役であり、さらにノウハウやナレッジを継承する役割も担う重要な存在です。その分業務過多になりやすいため、労働環境を改善して負担を軽減する必要があります。
例えば、業務量が多く残業時間が長くなりがちな場合は、社内で協力し合う雰囲気作りをするなどして残業時間を減らすのが効果的です。また、自分の働きが評価されていないと感じるとモチベーションが低下しやすいので、明確な評価基準を用意しましょう。
具体的な能力モデルを示し、キャリアパスをイメージしやすくすることも重要です。中堅社員が今後もこの企業で働き続けたいと思えるような環境を作りましょう。
目標設定を行う
マンネリ化した業務にばかり取り組んでいると、明確な目標をもたないまま仕事を続けていくことになります。目標のない仕事は達成感を得られにくく、モチベーションを維持するのは難しいものです。
そのため、中堅社員と意見を交わしつつ、成長につながるような目標を上司が示すようにしましょう。ただし、目標を設定する場合は難易度を高くし過ぎず、適度にチャレンジできる内容を選ぶようにしてみてください。
目標を達成することで自身の成長を実感しやすくなり、モチベーションの向上が期待できるでしょう。
自ら考えて決断できる機会を持たせる
中堅社員が抱える大きなフラストレーションのひとつは、業務上の責任は負わされるものの、肝心な意思決定権がないという状況です。
このギャップは強い不満とモチベーション低下を招きます。解決には、意思決定権やチーム運営の機会を積極的に与えることが有効です。
例えば、小規模なプロジェクトのリーダー役を任せたり、新人教育の方針決定を委ねたり、部署内の業務改善提案の実行権限を与えるなど、実際に決定権を持たせた役割を与えることが重要です。
このような疑似的なリーダー経験を通じて、中堅社員は自分の判断が組織に影響を与える実感を得ることができ、大きな成長とやりがいを感じられます。
積極的にコミュニケーションをとる
円滑に業務を進めるには、上司と中堅社員が積極的にコミュニケーションを取る必要があります。ときには、業務上の話だけでなく、感謝の気持ちを伝えたり、お互いに褒めあったりすると、より良好なコミュニケーションを取りやすくなるでしょう。
まずは、上司から中堅社員に対して「期待している」と伝えてみてください。中堅社員は「自分は認められている」と自覚ができ、承認欲求が満たされモチベーションが高まります。
その結果として、業務の中核を担う役割や社員同士の橋渡しなど、期待する成果を上げてもらいやすくなるでしょう。
他業界の人と交流するきっかけをつくる
社外・異業種交流の機会を提供することで、中堅社員のモチベーション向上が期待できます。同じ職場環境で働いていると視野が狭くなりがちですが、他業界の人との交流により、自分のスキルや職場環境を客観視でき、新たな刺激を得られます。
この取り組みは、キャリア不安の解消だけでなく、閉塞感や成長実感不足といった根深い問題の改善にも効果的です。人脈構築、業界トレンド把握、自社の強み再認識など多面的な効果があるため、企業が積極的に支援すべき施策です。
研修を行う
社員研修を行い、モチベーションの回復に努めるのも有効な方法です。特に、中堅社員は抱えている業務が多く、ほかの社員とゆっくりと話をする時間が取れない人も多いでしょう。
業務が多すぎるとモチベーションの低下につながるため、上司が中堅社員の業務量を調整する必要があります。調整して生まれた時間は、中堅社員がチャレンジしたいと思う業務を任せたり、社員研修への参加を促したりしましょう。
その際、社内にノウハウが不足している場合には、外部研修を活用することをおすすめします。例えば「東京・ビジネス・ラボラトリー(TBL)」では、企業向けのメンタルサポートに着目し、個人と組織の持続的な成長を実現するための研修を実施しております。
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まとめ
仕事のマンネリ化や疲労の蓄積は、モチベーションを下げる原因になります。放置しておくと仕事上のミスが増え、最悪の場合は離職にもつながりかねません。
中堅社員が挑戦できる仕事を割り振ったり、目標設定したりとモチベーションを維持したまま仕事ができるように調整してみてください。
「中堅社員の教育まで手が回らない」と悩んでいる方は、「東京・ビジネス・ラボラトリー(TBL)」まで、お問い合わせください。