SMARTの法則の具体例は?ビジネス上で期待できる効果を踏まえて解説

部下の成長を促すためには、適切な目標設定が大切です。曖昧すぎたり客観的に見て達成が不可能だったりする目標設定は、かえって部下たちのモチベーションを低下させるおそれがあります。適切な目標設定をするためには、SMARTの法則を参考にしましょう。 今回はSMARTの法則について、特徴や具体例を紹介します。


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SMARTの法則とは

SMARTの法則とは目標設定で用いられる手法です。5つの要素の頭文字を組み合わせてSMARTと呼ばれます。

5つの要素に沿って目標を設定することで、指導や評価がしやすくなります。

SMARTの法則における5つの要素

SMARTの法則を構成する5つの要素は、以下の通りです。

・Specific:具体性
目標を設定するときは、具体的な内容かどうかが大切です。例えば「多くの新規顧客を得る」では、抽象的すぎます。「前年度よりも〇%増加を目指す」など、具体的な目標を設定すると、達成度を客観的に評価できます。

・Measurable:測定可能性
目標は、客観的に測定できるものを設定しましょう。具体的な数字で目標が設定されていると、現状がゴールに対してどの程度まで達成したのか判断できます。

・Achievable:達成可能性
目標を高く設定しすぎると、達成できず部下のモチベーションを下げるおそれがあります。反対に低すぎても、部下の成長にはつながりません。低すぎず高すぎない、達成可能な範囲で設定することが大切です。

・Relevant:関連性
目標を立てるときは、組織の目的、事業、業務などと関連した内容であり、なおかつ利益をもたらすものでなくてはなりません。例えば資格取得を目標とするなら、業務に活かせるもののみを選びましょう。

・Time-bound:期限
内容によっては、莫大な時間をかければ目標達成する場合もあります。部下の成長につなげるためには、目標設定の時点で明確な期限を設けておくことが大切です。1日、1週間、1か月、四半期、半期、年間など、具体的な期限を設けておくと、進捗を把握しやすくなります。部下自身も、目標の期限から逆算して計画を立てやすくなるでしょう。

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SMARTの法則の活用により期待できる効果

目標設定でSMARTの法則を活用すると、さまざまなメリットが期待できます。

評価基準の明確化

SMARTの法則に沿って適切に設定した目標は、数値を用いています。目標数値を設定するメリットは、評価基準が明確化されることです。

目標設定が「先月よりも新規顧客を増やす」といった曖昧な内容では、1人獲得できた人も10人獲得できた人も同じく達成した扱いとなります。10人の新規顧客を増やした部下にとっては、納得のいかない評価となるでしょう。

数値を用いた目標設定は、部下にとってゴールが明確化するのみならず、上司にとっても客観的な視点で評価できる効果があります。あらかじめ「先月よりも10人新規顧客を増やす」と明確な数値を設定しておけば、部下一人ひとりの達成度を評価しやすくなります。

納得度の高い目標設定は、人事評価において公平感を与える要素としても効果的です。

進捗の見える化

測定可能な指標を用いるSMARTの法則では、具体的な数値の設定によって誰が見ても進捗がわかりやすくなります。

SMARTの法則の特徴は、目標数値に加えて期限も設定する点です。期限から逆算してどの程度まで目標を達成しているのか、反対にどの程度遅れているのかがわかれば、軌道修正しやすくなります。

遅れているときは業務の優先順位を変えたり、原因を把握して対処してみたりと、進捗さえ把握できれば柔軟に対応できます。

計画の具体化

評価基準や進捗が見える化できるため、組織としての計画の具体化にも役立ちます。SMARTの法則に沿って設定した目標と実際の進捗は、プロジェクトをどのような方向性・スピードで進むべきか判断するための重要な情報です。

誰もが共通の基準で状況を把握しやすくなり、組織全体で同じ方向に進めます。チーム単位で見ても、メンバー全員の業務効率化や成果の最大化が期待できるでしょう。

計画の具体化は、個人のモチベーション向上やキャリア形成においても欠かせません。明確な道筋や目標があることで、前向きに取り組めるようになります。

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SMARTの法則の具体例

SMARTの法則は、すでに多くの企業で取り入れられています。ここでは、SMARTの法則を活用している具体例を分野ごとに紹介します。

経営

SMARTの法則は、個人のみならず経営目標の設定にもおすすめです。例えば営業利益について目標設定する場合、以下の要領で詳細に決められます。

【例:営業利益】
・Specific:営業利益を向上させる
・Measurable:営業利益20%を目指す
・Achievable:採算が悪いプロダクトの終了と新規開拓で達成可能
・Relevant:利益向上により追加融資を受けやすくなり新規事業を展開しやすくなる
・Time-bound:20XX年までの5年を目標に設定

「営業利益20%を目指す」と具体的な数値が決まれば、まず何から手を付けるべきか判断しやすくなります。上記の例では、利益向上がどのようなメリットに関連するのかもわかり、新規事業への可能性も見えてきました。

目標を明確にする方法は、組織のマネジメントにも有効です。

【例:組織マネジメント】
・Specific:社員の意見が経営層にも届くようにする
・Measurable:月1で部門を横断したミーティングを開く
・Achievable:議題を事前に共有して有意義な意見を交わせるようにする
・Relevant:経営陣も参加して組織の結束を高める
・Time-bound:準備が整い次第実施

部門の枠を取り払って月1回のミーティングを開くことにより、社員の間でどのような声があがっているのか、多くの管理職で共有できます。経営陣にも参加してもらえれば、上層部に意見を吸い上げてもらいやすくなり、風通しの良い組織づくりにつながるでしょう。

ほかにも、ブランド認知の拡大、コストカットの実現といった経営に関するさまざまな目標設定にSMARTの法則が活用できます。

営業

営業は売上や集客力など数値を意識する機会が多い環境です。具体的な数値で目標設定するSMARTの法則は、営業部門と相性は良いといえるでしょう。

【例:売上】
・Specific:既存顧客へのアプローチで売上を伸ばす
・Measurable:アップセルやクロスセルの強化で売上を20%向上させる
・Achievable:顧客への提案の機会を増やす
・Relevant:会社全体の売上アップにつながる
・Time-bound:3年後を目途に目標達成を目指す

SMARTの法則に沿った目標設定なら、このように既存顧客へのアプローチをどのように行うか、どの程度の売上アップを目指すかなどをわかりやすく整理できます。

【例:受注率】
・Specific:受注率を向上させる
・Measurable:営業部門の受注率を10%向上させる
・Achievable:部門内でのナレッジ共有を加速させる
・Relevant:受注率向上により売上アップにつながる
・Time-bound:来期末までの目標達成を目指す

受注率も、SMARTの法則なら進捗や取るべき行動が明確化します。

顧客対応

SMARTの法則は、顧客対応における課題解決にもおすすめです。顧客対応の良し悪しは、顧客満足度に直結します。

顧客満足度の向上は良い口コミを集め、企業のイメージアップにつながります。企業間競争に巻き込まれても、顧客満足度の高い企業なら選ばれやすくなるでしょう。

顧客満足度をはかるときに役立つ指標は、CSI(顧客満足度指数)やLTV(顧客生涯価値)、CRR(顧客維持率)などです。

【例】
・Specific:CRRの低下を防止する
・Measurable:月間でCRRが3%以上低下しないようにする
・Achievable:メルマガの配信やポップアップによる提案を強化
・Relevant:売上安定につながる
・Time-bound:月間のCRRは1年後を目標に安定を目指す

顧客満足度が高い状態とは、リピート購入があることです。具体的な数値でCRRの低下の許容範囲を設定すれば、顧客を維持できているかどうか客観的に判断しやすくなります。

採用

SMARTの法則は、採用活動を効率化させたいときにも役立ちます。目標として設定しやすい指標は、応募者数、書類選考の通過率、採用率、内定辞退数です。

【例】
・Specific:中途採用の採用率を向上させる
・Measurable:年間の採用率を30%以上に向上させる
・Achievable:自社にマッチした人材の応募が増えるようにパンフレットの充実化やイベントへの参加を増やす
・Relevant:自社にマッチする人材の採用は生産性向上にもつながる
・Time-bound:来期末を目途に目標達成を目指す

採用率を向上させるためには、そもそも自社にマッチした人材からの応募を増やさなくてはなりません。うまくマッチ度の高い人材を中心に採用できれば、関連するメリットとして生産性向上も期待できます。

人事

人事評価のほか、従業員の職場への満足度向上を図りたいときも、SMARTの法則に沿った目標設定が活用できます。評価や満足度は定量化しにくい部分もあるため、指標の選び方に注意が必要です。

目標設定時の指標として有効なものは、例えば離職率、残業時間数、有給休暇取得率、異動希望者数などがあげられます。

【例】
・Specific:有給休暇取得率を向上させる
・Measurable:有給休暇取得率を全部門で60%以上にする
・Achievable:取得しやすい環境の整備、働き方の見直しで達成見込み
・Relevant:働きやすい職場にすることで応募者数を増やし人材の獲得を拡大する
・Time-bound:翌事業年度末を目標

現代は、ワークライフバランスが重視される時代です。残業の有無のみならず、有給休暇の取得率もプライベートの充実度に大きく影響します。

具体的な有給休暇取得率を目標すると、従業員の満足度向上を図りつつ求職者へのアピールにもなります。

社員教育

社員教育の場でも、SMARTの法則による目標設定が効果的です。具体的な数値を設定して上司と部下で進捗を共有すると、一人ひとりに向き合った教育を施せます。

社員教育で設定できる指標は、研修実施回数、社員一人あたりの平均研修時間、研修参加率などです。

【例】
・Specific:社員の研修への参加率を向上させる
・Measurable:社員の研修参加率80%を達成する
・Achievable:1on1ミーティングにより社員一人ひとりの課題を意識してもらい、社員にとってよりメリットのある研修を取り入れていくことで達成する
・Relevant:社員のスキルや能力を伸ばすことで会社全体の生産性向上につなげる
・Time-bound:3年を目途に達成を目指す

社員研修への参加率を向上させるためには、どのような教育プログラムを取り入れるかも大切です。社員教育の強化には東京・ビジネス・ラボラトリー(TBL)の企業研修がおすすめです。

課題や経営の方針をヒアリングした上で、最適なプログラムにカスタマイズされた企業研修を提供いたします。世界基準の手法とノウハウを学べるため、堅実な成果につながります。

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まとめ

目標設定を行うときは、SMARTの法則を指標にしましょう。明確な数値や期限を決めて目標を設定するSMARTの法則なら、組織やチーム単位でも計画を立てやすくなります。

個人単位でも、どの程度まで達成できているのか進捗を容易に確認できるため、従業員・部下のモチベーションアップに効果的です。

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