部下との面談で質問内容を整理しなければいけない理由
部下との面談を効果的に進めるためには、事前に質問内容を整理しておくことが不可欠です。質問を準備せずに面談に臨むと、話が脱線したり、本来聞くべき重要な事項を聞き逃したりする恐れがあります。
面談における質問の役割
面談での質問には、単に情報を収集するだけでなく、部下との信頼関係を構築し、成長を促す重要な役割があります。適切な質問を通じて、部下の本音や悩み、キャリアに対する考えを引き出すことができ、それが組織全体の活性化にもつながります。
また、質問は部下に「自分のことを気にかけてくれている」というメッセージを伝える手段でもあります。事前に準備された質問は、上司が面談を真剣に捉えていることの証明となり、部下のモチベーション向上にも寄与します。
面談の目的を明確にすることが重要
質問内容を整理する前に、まず面談の目的を明確にすることが重要です。面談の目的は大きく分けて以下のようなものがあります。
・業務の進捗確認:現在取り組んでいる業務の状況や課題を把握する
・目標設定と評価:目標の達成度を確認し、次の目標を設定する
・育成とキャリア開発:部下の成長を支援し、キャリアプランを共有する
・コミュニケーション強化:日常業務では話せない悩みや要望を聞く機会を作る
・エンゲージメント向上:組織への帰属意識やモチベーションを高める
面談の目的によって、準備すべき質問内容は大きく変わります。例えば、業績評価が目的の面談では定量的な成果に関する質問が中心となりますが、キャリア開発が目的の場合は、部下の将来のビジョンや希望する方向性についての質問が重要になります。
部下との面談で失敗する理由

部下との面談は、適切に実施すれば組織の成長や部下の育成に大きく貢献しますが、準備不足や進め方の誤りによって逆効果になることもあります。ここでは、面談でよくある失敗パターンとその原因について解説します。
質問内容を準備できていない
面談において最も多い失敗のひとつが、質問項目や話す内容を事前に用意していないことです。準備なしで面談に臨むと、単なる雑談で終わってしまったり、お互いに何を話したらいいのか分からず沈黙が続いたりする事態に陥ります。
特に問題なのは、質問内容だけでなく面談の目的そのものが明確でない場合です。目的が曖昧なまま進めると、話す内容が表面的になり、部下にとっても「意味のない時間」と感じられてしまいます。部下が貴重な時間を割いて面談に参加しているにもかかわらず、得るものがなければ、今後の面談への協力姿勢にも悪影響を及ぼします。
効果的な面談を実現するには、事前に「今回の面談で何を達成したいのか」を明確にし、その目的に沿った質問項目をリスト化しておくことが不可欠です。また、部下の最近の業務状況やこれまでの面談内容を振り返り、個別の状況に合わせた質問を用意することで、より深い対話が可能になります。
一方的に上司が話している
面談の主役は部下であるべきですが、上司が一方的に話し続けてしまうケースは少なくありません。上司が自分の考えや指示ばかりを伝え、部下の意見や考えを聞かない状態では、真のコミュニケーションは成立しません。
このような面談では、部下は受け身の姿勢になり、自分の考えを述べる機会を失います。結果として、部下の本音や悩み、アイデアを引き出すという面談本来の目的が達成できなくなります。
理想的な面談では、部下が話す時間が全体の7割程度を占めるべきだと言われています。上司の役割は、適切な質問を投げかけ、部下の話を傾聴し、必要に応じてアドバイスや フィードバックを提供することです。部下が主体的に話せる環境を作ることで、より深い気づきや成長の機会が生まれます。
部下が本音を話しにくい雰囲気がある
面談には上司と部下のコミュニケーションを活性化し、信頼関係を構築する重要な目的があります。しかし、部下にプレッシャーを与え、話しにくい雰囲気を作ってしまうと、この目的は達成できません。
心理的安全性が確保されていない面談では、部下は本音を隠し、上司が聞きたいと思われる「正解」を答えようとします。表面的な会話に終始し、信頼関係を深めることも、成長につながる本音を引き出すこともできなくなります。
部下が本音を話せない雰囲気が生まれる原因には、以下のようなものがあります。
・評価面談と混同し、部下が「下手なことを言えない」と感じている
・上司が批判的な態度や否定的な反応を示している
・面談の場所や時間設定が不適切で、周囲の目が気になる
・過去の面談で話した内容が適切に扱われなかった経験がある
これらを避けるためには、面談の目的を明確に伝え、「評価ではなく成長支援の場である」ことを理解してもらう必要があります。また、部下の意見を否定せずに受け止める姿勢や、秘密保持の約束を守ることで、安心して話せる環境を整えることが重要です。
部下との面談で使える質問の種類

部下との面談では、いくつか使える質問の種類があります。部下との面談で使える質問の種類は、主に以下の2つです。
・クローズド・クエスチョン
・オープン・クエスチョン
どういった質問方法なのかを理解し、部下との面談をより良い時間にできるよう、効果的に使い分けましょう。
クローズド・クエスチョン
クローズド・クエスチョンは、相手が「Yes」か「No」で答えられる質問を指します。例えば、「資料は完成した?」や「明日の15時にミーティングできる?」などです。
クローズド・クエスチョンは、簡潔なやり取りですぐに答えを引き出せるのがメリットです。また、答えがハッキリしているため、相手の考えや事実を正確に把握できます。相手に事実確認や認識のすり合わせを行う際に有効です。
オープン・クエスチョン
オープン・クエスチョンは、回答に制限のない質問で、相手の新しい気づきや発想を促します。例えば「なぜそう思う?」や「今困っていることはある?」などです。
オープン・クエスチョンは、相手の考えを相手の言葉で聞けるのがメリットです。相手側にとっても、ちゃんと自分の意見を聞いてくれているという安心感を与えられます。相手の意見を引き出すときに向いている質問方法です。
部下との面談で使える8つの質問例
質問例を知っておくと、部下との面談時に何を聞けば良いのか迷わずに済みます。基本的な質問をいくつか覚えておきましょう。
部下との面談で使える質問例として、以下の8つがあげられます。
・日々の業務に関する質問例
・モチベーションに関する質問例
・能力やキャリアに関する質問例
・プライベートや心身に関する質問例
・目標達成に関する質問例
・職場環境に関する質問
・人間関係やチームに関する質問例
・フィードバックに関する質問例
一度に聞くのではなく、分野ごとに整理して質問することが大切です。それぞれの具体的な質問例を紹介します。
1.日々の業務に関する質問例
毎日担当しているからといって、必ずしも割り当てられた業務に満足しているとは限りません。失敗したり課題を感じていたりして、「自分以外の人に任せてほしい」と思っている場合もあります。
現状、日々の業務に対してどのように感じているのか、以下の質問で確認しましょう。
・部署内で担当している仕事に関してどう感じている?
・うまくいかなかった理由はある?
・現状の課題はある?
・業務でサポートしてほしいことはある?
・残業となる原因は?
・業務量についてどう感じている?
仕事に関する質問は聞き方を誤ると高圧的になってしまうため、注意すべきです。親しみやすい雰囲気を意識的に出して、相手にリラックスした状態で話してもらう必要があります。
2.モチベーションに関する質問例
部下のモチベーションは、日常のちょっとしたきっかけで上下するものです。人によって理由は大きく異なるため、適切な指導やサポートをするためには一人ひとりのモチベーションを下げる原因を把握しましょう。
モチベーションに関する質問例は、以下の通りです。
・うまくいった施策や行動はある?
・モチベーションが上がるのはどんなとき?
・モチベーションが下がるのはどんなとき?
・自信があるのはどんなこと?
・今、不安なことはある?
モチベーションは部下の作業効率に直接関わってくるため、質問内容は慎重に選ぶ必要があります。
自信があることを覚えておくと、仕事を振りやすくなります。モチベーション低下を防ぐためには、不安を抱いていることを把握しておくことも大切です。
3.能力やキャリアに関する質問例

能力やキャリアに対する考え方は、人それぞれです。同じ部署に在籍していたとしても、描いている将来像まで共通するとは限りません。
それぞれが最適なキャリアパスを描けるように、以下の質問で本人の現状と希望を確認しましょう。
・成長する上での課題は何だと思う?
・将来的に挑戦したい仕事はある?
・自分の強みはどこだと思う?
・君の成長に関して手伝えることはある?
・自分の能力が生かされていると思う?
・得意だと感じる業務は?
・好きな業務は?
・現在の業務の難易度は適切だと感じている?
・取得したい資格はある?
・どのようなキャリアを目指している?
・将来のキャリアのためにどのような経験を積みたい?
・他部署でやってみたいことはある?
能力やキャリアに関する質問は将来の組織にも関わってくるため、上司として把握しておくべきポイントです。
上司の立場で進んでほしい道があったとしても、面談の場は聞き役に徹しましょう。
4.プライベートや心身に関する質問例
部下の個性や考え方を知る方法として、プライベートや心身に関する質問があります。一見すると業務から離れている質問は、面談の雰囲気が悪くなったときのアイスブレイクとしても効果的です。
・趣味はある?
・最近興味のあることは?
・好きな食べ物は?
・嫌いなものはある?
・休日は何をして過ごしている?
・最近買って良かったものは?
・欲しいものはある?
・体調面で気になることは?
・ストレスはある?
・ストレスは発散できている?
・週末は休めている?
・仕事の悩みは相談できている?
あまり深く聞きすぎてしまうと不快感をもたれてしまう場合もあるため、注意しながら聞きましょう。プライベートな部分は真正面から否定せず、受け止めることが信頼につながります。
5.目標達成に関する質問例
目標達成に関する質問例は、以下の通りです。
・社内目標に対してどんな成果を出せた?
・自己目標は達成できた?
・うまくいかなかった仕事はあった?
・目標に妥当性を感じている?
・目標達成のためにどんな工夫をしている?
・今期の目標は?
・設定した目標の理由は?
・来年挑戦したいことはある?
目標達成は部下の成長につながるため、上司が質問で促してあげられるのが理想です。上司は把握していなくても、実は部下なりに考えがあるかもしれません。失敗を責める流れにならないよう、注意して聞きましょう。
もっと高い目標を設定すべきか、反対に下方修正すべきか判断するためにも、現状の達成度について本人の考えを聞くことも大切です。現状を深掘りして、本人に合った目標設定ができれば、モチベーションアップも期待できます。
6.職場環境に関する質問

職場環境は、生産性に大きく影響します。例えば室温が高すぎたり低すぎたりすると、健康に害がおよぶおそれもあります。
職場環境に対する満足度を測るためには、以下の質問が効果的です。
・空調に問題はない?
・使用しているPCや機器に問題はない?
・社内システムに不満はある?
・コミュニケーションツールは活用できている?
・資料へのアクセスやデータ、情報の保存に問題はない?
・有給休暇は取りやすいと感じている?
・福利厚生は利用できている?
・各種申請フローに不満はある?
・研修の内容は分かりやすい?
・業務の引き継ぎやマニュアル整備に問題はない?
職場環境が合わない場合、モチベーションや業務効率を低下させるため、チームや組織全体への影響も懸念されます。高い生産性を実現するためにも、体調管理しやすい快適な職場環境を提供することが大切です。
過ごしやすさのほか、研修や業務の引き継ぎなど、業務面に直接関係する部分も質問しましょう。
7.人間関係やチームに関する質問例
組織で働く以上、完全に単独行動を貫くことは不可能です。個人プレーが優秀だったとしても、チームの仲間と円滑なコミュニケーションを取れていなければ、業務に支障が出るおそれがあります。
以下のように人間関係やチームに関する質問を行い、現状を把握する必要があります。
・チーム内でのコミュニケーションはスムーズにとれている?
・報告・連絡・相談はしやすい?
・チーム内で自分の意見を気軽に発言できている?
・チームの課題やトラブルはある?
・チーム内での人間関係について改善点はある?
・チーム内の人間関係をより良くするためには何が必要?
人間関係における質問では、チームメンバーとのコミュニケーションに問題はないか、報告・連絡・相談のスピードに影響はないか確認します。
優秀な人材に長く働いてもらうためには、チーム内で本人の意見や考え方、働き方が尊重されていることが大切です。
普段は言いにくい悩みや要望を教えてもらうチャンスです。トラブルについて聞くだけではなく、漠然とした違和感や「改善したほうが良いかもしれない」程度の意見にも耳を傾けましょう。
8.フィードバックに関する質問例
フィードバック後に改善が見られないときや、歯切れの悪い返事しか返ってこないときは、伝え方そのものに原因があるかもしれません。面談で効果的なフィードバックの方法を探りましょう。
フィードバックにおける質問例は、以下の通りです。
・印象に残っているフィードバックはある?
・フィードバックをもらった後の対応は?
・上司から適切にサポートされていると感じている?
・どんなフォローをしてもらえると助かる?
フィードバックは、伝え方によって悪い方向に受け取られるおそれがあります。パワハラにならないようにと簡潔に伝えたとしても、「言い方が威圧的で怖い」「どこが悪いのか具体的に教えてくれない」など、不満をもっているかもしれません。
互いに安心してフィードバックをやり取りできるようにするためには、具体的に良かった例や悪かった例を答えてもらい、参考にしましょう。フィードバックのみでは不十分な部下もいるため、必要なフォローやサポートの要望も聞いておくことが大切です。
部下との面談で質問する際に意識すべき5つのポイント
部下にただ質問するだけでは良い面談にはなりません。面談で質問する際に意識すべきポイントは、以下の5つです。
・一度に多くの答えを求めない
・面談の目的を意識して質問する
・気軽に話せる雰囲気づくりを意識する
・部下の話を途中で遮らない
・フォローアップを行う
部下との面談に問題意識をもっている場合は、解決のヒントになるかもしれません。しっかり把握しておきましょう。
①一度に多くの答えを求めない
質問する際は、ひとつずつ聞くようにしましょう。部下を質問責めにしてはいけません。できるだけシンプルでわかりやすい質問だと、部下も答えやすくなります。
一度に多くの答えを求めてしまうと、負担に感じたり何を答えれば良いかわからなくなったりするおそれがあります。本当に聞きたい答えを引き出すためには、質問内容を整理し、ひとつずつ聞きましょう。
②面談の目的を意識して質問する
面談をする際には、常に目的を明確にしておきましょう。部下との面談は部下の成長が目的のひとつなので、自分の意見ばかり押し付けるのはNGです。
意識しないと、どんどん目的からずれてしまうケースも多いです。事前に部下にも面談の目的を共有し、目的に沿った質問を意識しましょう。
③気軽に話せる雰囲気づくりを意識する
いきなり本題に入ると、部下は緊張して本音を話しにくくなります。面談の最初には、アイスブレイクを取り入れて、リラックスした雰囲気を作ることが重要です。
効果的なアイスブレイクの例としては、以下のようなものがあります。
・プライベートに関する軽い話題
「最近何か楽しいことあった?」「週末はどう過ごした?」など、業務に直接関係のない気軽な話題から始める
・時事ネタや共通の関心事
「今朝のニュース見た?」「最近話題の○○について、どう思う?」など、お互いが関心を持てる話題で会話を始める
・ポジティブな振り返り
「前回の面談以降、うまくいったことは何?」「最近の良かった出来事を教えて」など、前向きな話題からスタートする
このように、部下が答えやすい質問から始めることで、自然と会話が弾み、本題でも話しやすい雰囲気が生まれます。面談室の環境にも配慮し、プライバシーが守られる静かな場所を選ぶことも大切です。
④部下の話を途中で遮らない
部下の話は最後まで聞きましょう。話を途中で遮って質問や否定をするのはNGです。気になることがあっても、ひとまず最後まで話を聞くようにしましょう。
上司は8割以上の時間は、部下の話に耳を傾けるべきともいわれています。上司が考えているより話に耳を傾けないと、部下は話を聞いてもらえたと感じません。聞く姿勢は面談中、常に意識しましょう。
⑤フォローアップを行う
面談で出てきた課題や要望、今後のアクションについては、必ず記録を取り、定期的に部下にフィードバックすることが大切です。面談で話し合った内容も、その後フォローがなければ、部下は「結局何も変わらない」と感じ、次回以降の意欲を失ってしまいます。
定期的に進捗状況を確認したり、短いフォローの場を設けたりすることで、部下は「話を聞いてくれた」「気にかけてもらっている」と実感でき、モチベーションの向上にもつながります。
具体的なフォローアップの方法としては、以下のようなものがあります。
・面談後1週間以内に、話し合った内容の要点と今後のアクションを文書で共有する
・次回の面談までの中間地点で、進捗を確認する短いミーティングを設定する
・日常業務の中で、面談で話題になったテーマについて声をかける
面談は単発で終わらせず、継続的なコミュニケーションの起点と捉えることが成功の鍵です。定期的な面談とその間のフォローアップを組み合わせることで、部下の成長を着実にサポートできる関係性が構築されます。
まとめ
部下との面談は、目的を明確にし、クローズドとオープンの質問を使い分けながら、業務・モチベーション・キャリアなどを分野別に聞くことで成果が出やすくなります。失敗の原因は準備不足や一方的な進行、話しにくい雰囲気にあるため、質問は一度に詰め込まず、傾聴とフォローアップまでセットで行うことが重要です。まずは次回の面談目的を決め、使いたい質問を数個リスト化して実践していきましょう。
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