目次
管理職が知っておきたいコーチングとは?
まずは、管理職として知っておきたいコーチングとは、どういった指導方法なのか、その概要とティーチングとの違いを説明します。
コーチングとは?
一般的にコーチングとは、管理職や親、教師など教える立場にある方が、豊かな経験則や知識をもとにして、部下や子供、生徒の自発的な行動を促し、目標達成への指導を行うことをいいます。
職場におけるコーチングでは、部下の話を積極的に聞いて質問や提案をしながら答えを出すサポートをします。この指導方法が効果を発揮しだすと、部下は自ら考えて行動するようになります。「答えは相手の中にある」と信じて部下を導いていく、それがコーチングです。
ティーチングとの違い
ティーチングとは、部下に具体的な指示をしたり、最初から答えを教えたりすることをいいます。そのため、ティーチングは「上司が思う方向に動いてもらうためのコミュニケーション」といえます。
コーチングでは答えが部下側にあると考え、問題解決までのフォローを行う一方で、ティーチングでは答えが上司(管理者)側にあると考えます。問題の解決策や答えを教える点に違いがあります。
コーチングの3つのメリット
コーチングには、主に次の3つのメリットがあります。それぞれの、コーチングのメリットを詳しく説明します。
部下が主体性をもって行動できる
コーチングによる指導の最大のポイントは、部下に自ら考えてもらい行動してもらうことにあります。部下の主体性が養われ、積極的に行動してくれるようになります。
答えを教えるのは非常に簡単ですが、それでは部下はいつまで経っても、自分の頭で考えて行動できるようになりません。しかし、コーチングを利用すれば、部下が自ら課題を考え、答えを見つけていく習慣をもつようになります。
部下のモチベーションがアップする
コーチングを受けた部下は、自発的な行動と目標を結び付けるようになり、モチベーションがアップしやすくなるメリットがあります。自分で考えて仕事をしている状況や目標との紐づけによる結果を求める気持ちから、向上心が自然と芽生えるのです。
自分で動いているという自覚から生まれるモチベーションは、仕事へのやる気や成長に直結していくため、部下は飛躍的に力を伸ばすようになります。
部下の良さを引き出せる
コーチングは一律のやり方ではなく個別対応を基本としています。そのため部下も疑問点や悩みを相談しやすく、個人に合わせた柔軟な対応を繰り返す中で、良さや能力を引き出すことが可能です。また、対話を重ねる中で、部下本人も気づいていなかったような新しい個性を発見する機会にもなります。
部下の育成でコーチングをする際の流れ
コーチングの役割は、気付きを与えることです。直接答えを教えることなく、相手が自ら考えて、答えにたどり着くように導きます。そうすることで、自主性を育てるのが狙いです。
では、そのようなコーチングの役割を踏まえた上で、主なプロセスについてみていきましょう。
現状を把握する
最初に部下が現在どのような状況にあるのか把握するためにヒアリングをする必要があります。
現状でどこまでならできているのか、どんなところでつまずいているのか話を聞いてみましょう。具体的に掘り下げるのがコツです。
部下が漠然とした内容しか話してくれないときには、話しやすい状況を作りましょう。質問をするときに、具体的な内容にフォーカスを当てた聞き方をすると、部下も掘り下げたことを話しやすくなります。
また、感じていることや思っていることだけでなく、客観的な事実を確認することも大切です。
目標を設定する
現状を把握したら、部下がどのような目標を目指しているのか聞き出してみましょう。聞き出した結果、具体性が乏しく、まだ目標があいまいなことも多いかもしれません。
そのようなときには、もっと掘り下げて聞く必要があります。目標を達成したときにどんなことを感じているのか、どんな状態になっているのかという具合です。
そして、目標達成によりどんなことを得られるのか確認した上で、具体的な目標を設定するようにしましょう。
目標達成における問題点を明確化する
なかなか目標を達成できない場合には、妨げとなる障害が何かあるはずです。そのため、どんなことが目標達成の妨げになっているのか確認して明確にしておきましょう。
例えば、環境・人間関係・スキル・心理的な面などが、目標達成の妨げになりやすいです。部下本人が自分で認識している場合もあれば、気付いていないこともあるでしょう。
そのような場合には、掘り下げて質問をすることで、気付くように誘導する必要があります。
行動計画を立てる
目標達成のために、どのような手順で行動していくのか、具体的な計画に落とし込みましょう。具体的に何をすれば良いのか明確になっていれば、それに向けた努力もしやすくなります。
現状と目標が遠い場合には、計画も長期間にわたるため、目標達成までの期限を設けることも大事です。
また、最終的なゴールだけでなく、中間目標をいくつか設定すると良いでしょう。途中で中間目標を達成することで、ステップを踏みながら順調にゴールに近づいていると実感できます。
フォローアップをする
行動計画の進捗を定期的に確認し把握しておくようにしましょう。計画があまり順調にいっていないことも多いです。そのような場合には、今後どのように行動すればうまくいくのか、本人をフォローする必要があります。
このとき、上司が一方的に指示するようなやり方はコーチングとしては良くありません。部下が主体的に考えた上でやり方を決められるように、意見を提案する程度にとどめておくのが望ましいです。
コーチングを成功させるための4つのポイント
コーチングを成功させるために、次の4つのポイントをおさえておきましょう。それぞれのポイントについて詳しく説明します。
1.マンツーマンで行う
コーチングは、相手の心に寄り添って対話をしながら進めていく手法です。そのため、基本的には1対1で行います。
同じ目標をもつ部下が複数人いたとしても、一緒にコーチングをするのは望ましくありません。人により現状が異なり、ゴールが同じだったとしても、行動目標の具体的な内容はそれぞれ違ってくるでしょう。
フォローアップなども、部下の状態や性格などを考慮して行わなければなりません。複数の部下を同じやり方でコーチングしても、あまりうまくいかないことが多いです。
そのような事情から、コーチングは大人数の教育に向いていないというデメリットがあります。
大人数に対して、同じ手法で同じ内容の指導、教育を行っていくのなら、ティーチングのほうが向いているといえるでしょう。
2.コーチ自身のスキルを向上させる
コーチングで必要なのは傾聴力、質問力、承認力の3つのスキルです。
・傾聴力:相手の意見を聞くだけでなく、心や目を使ってしっかりとした姿勢で向き合いながら話を聞く力
・質問力:相手が自分の問題について気づきを促すような有益な質問をする力
・承認力:相手の成長や行動、具体的な変化を認め、態度や言葉で積極的に伝える力
この3つの能力が高くなければ、コーチングは成り立ちません。逆に、コーチングは、3つのスキルを伸ばしていけば、誰でもできるようになるともいえます。
コーチングのスキルは、社内研修を実施したり、コーチ自らが研修に参加したりすることで向上させることができます。
3.時間をかけて取り組む
コーチングは、一方的な質問や回答ではなく、双方的なコミュニケーションを重視する指導方法です。部下の気づきや発見に着目しながら指導、教育を進めていくため、短期間での教育には向きません。
無理に短期間で済ませようとすればできるかもしれませんが、十分な効果は期待できないでしょう。ティーチングと同じように、知識ややり方などを教えるだけになってしまう可能性があります。
それとあわせて、双方の信頼関係の構築が非常に重要です。上司がコーチングスキルを習得していても、相手の部下との信頼関係が不十分な状態では、うまくいきません。信頼関係の構築も一朝一夕では難しく、じっくりと時間をかけて少しずつ信頼を育んでいく必要があります。
コーチングは植物の苗木を育てるのによく似ていて、丁寧に時間をかけて取り組むことで結果がついてくるものです。
1か月、2か月、3か月とコーチングの期間が経てば経つほど、部下が立派に成長していることに驚くでしょう。そのころには、社内体制や社員同士の空気感も大きく改善されているはずです。
4.部下にとって相談しやすい環境を整える
コーチングを行うときは、部下にとって相談しやすい環境を整えましょう。相談しづらい環境では、コーチングに必要な情報が引き出せません。部下との信頼関係も構築されにくいため、思うような効果が出なくなります。
いつでも質問して良いと伝えておく、上司のほうから積極的に話しかけるなどして話しかけやすい雰囲気をつくることが大切です。
また、部下から質問や相談を受けたときは真摯に向き合うようにしましょう。上司がしっかり対応してくれるとわかれば、部下が安心して相談できるようになります。
コーチングをする際の注意点
ここでは、コーチングを行う際に、上司が注意したい点を3つの視点から解説します。
過度にプレッシャーをかけない
コーチングで部下の意欲やチャレンジ精神を引き出そうと、あえてプレッシャーをかけることがあるかもしれません。
しかし、過度なプレッシャーは部下が失敗を恐れるようになり、かえって意欲の低下やチャレンジ精神の欠如を招く場合があります。
短期・中期・長期の目標設定で達成しやすくする、企業や上司がバックアップすることを伝えるなど、部下が安心してチャレンジできる環境を整えましょう。
答えや結論を押し付けない
コーチングをする側は客観的な視点を保てるため、課題や悩みの解決策や結論が見えやすい傾向があります。
しかし、「こうすれば良い」と押し付けるのはNGです。一方通行のフォローではティーチングになってしまう上に、自分で考える機会が失われるため、部下の成長が阻害されます。
人はそれぞれ目標やキャリアに対する考え方が異なるため、部下の考えや意見を尊重して進めましょう。部下自身の理想が反映された目標であれば、自発的に行動するようになるメリットもあります。
さらに、効果的なコーチングのために、日頃から風通しの良い環境づくりが欠かせません。報告や相談がしやすい環境をつくることで、信頼関係も築きやすくなります。
コミュニケーションを積極的に取る
日常的に部下とコミュニケーションを取っていれば、部下の現状や悩みを把握しやすくなり、適切なフォローができます。
1on1ミーティングや面談など定期的な対話の機会を設け、積極的に話しかけるよう信頼関係を構築しましょう。
まとめ
コーチングは、部下の指導、教育において、非常に大きな成果が期待できます。コーチングが成功すれば、部下は積極的に仕事に取り組むようになり、会社全体の生産性は大きく高まるでしょう。また、コーチングをとおして双方間でコミュニケーションを交わすことで部下の傾向や将来への考え方を知ることができます。
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