【タイプ別】部下の指導・育て方|指導スキルや心がけるべきことを解説

一口に「部下」といっても、もっている能力や意欲の高さは人それぞれ異なります。部下の能力や意欲にあわせて適切な指導を行いたいと思っていても、なかなか思うようにいかないのが実情ではないでしょうか。そこで今回は、管理職で人材のマネジメントを担当されている方に、部下のタイプ別に指導や教育方法をわかりやすく解説していきます。


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タイプ別に部下を指導するときに押さえておきたい3つの基本

管理職としてタイプ別に部下を指導・教育するのなら、次の3つの基本を押さえておきましょう。まずは、それぞれの3つの基本の内容について説明していきます。

部下の特徴を理解する

管理職として、部下に指示通り動いてもらうためには、日常的な関わりから性格や特性を見極め、どのような特徴を持っている人間なのかを理解することが非常に重要です。

例えば、自分で物事を考えられるある程度自立しているタイプの部下であれば、自分で考えるための時間を設けることが有効な方法となるでしょう。

また、頼りがいのある管理職として部下から信頼を得るには、日常的なコミュニケーションから「仕事がしやすい」と感じる関わり方を見つけ、適切に対処していくことが大切です。そのため、部下といっても、全員に同じ指導をしたら良いわけではないのです。

指導計画を立てる

日常での関わり合いのなかで部下の特徴を理解できたら、部下に合った指導計画を立てる必要があります。具体的には、次のことを明確にしておきましょう。

・だれに対して
・いつまでに
・どのような指導を
・どの程度まで行っていくのか

ただし、上司が一方的に部下の指導計画を立てるのは避けましょう。興味のある分野や描いている将来像、必要なスキルは部下によって異なります。部下のやる気を引き出すには、本人が納得できる指導計画を立てることが大切です。

部下の目標と指導内容、期限を明確化しておくことで、どこに向かって進むべきかが管理職と部下の間で明確になります。

役割を与える

部下を指導する際は、部下に役割を与えましょう。役割を与えられた部下は、責任感や主体性をもって仕事に取り組むようになります。逆に、役割を与えなければ、仕事への責任感がうまれないため、いつまでたっても主体的に行動できるようになりません。

そのため、部下の積極性を引き出す点において、役割を与えるのは、非常に効果があります。

【4つのタイプ別】部下の指導・育成方法

管理職として部下を指導・教育する場合、レディネスレベルがどの程度あるか、チェックしてみましょう。レディネスとは、学習のために必要な準備状態がどの程度整っているかを意味する心理用語です。

レディネスの高い人は、自分から積極的に勉強し学習を進めます。一方で、低い人は、学習に関心がなく、効果を上げることが困難といわれています。

部下のレディネスレベルは、次の軸で図れます。

・能力の高さ
・意欲の高さ

これらの軸を組み合わせると、部下のタイプは次の4つに絞れます。

・能力&意欲が高い部下
・能力は高い&意欲は低い部下
・能力は低い&意欲は高い部下
・能力&意欲が低い部下

それぞれの指導のポイントを紹介します。

1.能力&意欲が高い部下

学習能力や意欲が高い部下の能力を最大限発揮させるには、仕事をとおして正しい方向へ導く指導が必要です。例えば、部下の言葉や行動を分析して思考パターンを把握し、相手に届きやすい言葉でコミュニケーションを取ることは非常に重要です。そのためには、上司は論理的な思考をもって育成する必要があります。

能力・意欲ともに高い部下には、業務を任せサポートに回ることを意識したり、部下の自発的な行動やチャレンジを促したりしましょう。成果を出した際は一緒に喜び褒めることで、強力な片腕としてその能力を最大限発揮するようになるでしょう。

2.能力は高い&意欲は低い部下

能力は高いものの学習意欲が低い部下は、指導の仕方次第では、大きく成長する可能性を秘めています。そのため、部下の価値観や大事な考えを基準に、モチベーションを高める方法を一緒に探っていくと良いでしょう。

成長を促すには、価値基準を知るための質問を行い、部下の大切にしている価値を尊重しコミュニケーションをとって指導することが大切です。

例えば、部下の仕事に対するモチベーションの向上と維持するために、実績や成果を評価し具体的に褒めたり、モチベーションが低くなっている原因を聞き出し整理して解決したりしましょう。

現在抱えている仕事の不安や不満などを解消すれば、能力を十分に発揮してくれる最良の部下となります。

3.能力は低い&意欲は高い部下

能力は低いものの学習意欲が高い部下は、指導の仕方次第では、能力・意欲ともに高いタイプの部下へと成長する可能性を秘めています。

成長を促すには、高い意欲を活かして能力を伸ばす指導が必要です。例えば、自主性を育てるコーチングによる指導法は、非常に効果的です。

コーチングとは、上司が部下に「答えを与える」のではなく、「答えを引き出す」指導方法です。「○○をするにはどうすれば良いか?」と部下に質問をすることで、部下から答えを引き出し、適切な信頼関係を築きながら能力を高めていくことができます。

そのためにも、業務範囲を明確にしてサポート体制を充実させ、進捗確認や励ましを行っていくことが大切です。

4.能力&意欲が低い部下

能力と学習意欲が低いタイプの部下は、心理的な負担をかけすぎない具体的な指導が必要です。例えば、やるべき事は具体的に説明し、1回の説明を短めにします。また、面談の機会を定期的に設けてコミュニケーションを取ることも大切です。

部下の話を聞くことを優先し、解決策を部下自身で考え結論を出させることで、次第に能力や意欲が高まっていきます。

部下を指導するうえで欠かせないスキル

部下を指導するにあたって、下記の3つのスキルを身に付けることも重要です。

・ティーチング
・コーチング
・フィードバック

部下を指導・育成するには、これらのスキルをうまく組み合わせ、使い分けて行く必要があります。それぞれどのようなスキルなのか詳しく解説します。

ティーチング

ティーチングとは、豊富な知識や経験をもつ人が、それを知らない人に教える技術です。一般的に指導者から生徒に一方通行で教える、講義のようなスタイルで行います。指導者は1人ですが、生徒側は1人であったり複数であったりとさまざまです。

ティーチングのスキルを身に付けておくと、部下が知らない知識やスキルを効率良く教えられます。

コーチング

コーチングとは、指導者が相手のコーチとなって、自ら気づき行動する力を育成する技術です。指導者が答えを教えるティーチングとは異なり、対話によって相手が自ら答えに辿り着けるようサポートします。

また、ティーチングは1対複数で行う場合もありますが、じっくりと対話する必要があるコーチングは1対1で行うのが基本です。

コーチングを行う際に注意したいのが、「部下が自力で答えに辿り着くには部下に知識が必要」ということです。対話のテーマとなる事柄について一切知識がない人がどれだけ考えても、答えには辿り着けません。

そのため、新入社員などテーマについての知識が浅い人にコーチングを行う場合は、先にティーチングによって必要な知識を学んでもらう必要があります。

フィードバック

フィードバックとは、相手の行動や成果物などに対して客観的な視点で評価・指摘することです。「フィードバック=良くない点を教える」と考えている方もいるのですが、改善点だけでなく良いところ、評価できるところも伝えます。

自分の行動や成果物への反応がないと、部下は不安を抱いたりやる気を失ったりしがちです。部下の行動や成果物に対して具体的に改善点や評価できる点を伝えれば、モチベーションを維持しやすくなるでしょう。

部下の指導・育成のポイント

管理職として部下を指導・教育する際は、次のポイントを押さえておくことが大切です。それぞれのポイントを詳しく説明します。

部下の目標設定をする

部下の成長につながるように適切な目標設定をしましょう。

部下の能力を考慮したうえで、高すぎず、低すぎない目標を設定することが大切です。高すぎる目標は挑戦前から部下が尻ごみする可能性があり、逆に簡単な目標では大きな成長は期待できません。

適切な目標を設定するためにも、部下をよく観察することが重要です。本人の強みや弱み、性格だけでなく、モチベーションの状況も加味して目標設定をしましょう。

信頼関係を築く

部下を指導する場合は、真っ先に信頼関係を築くようにしましょう。信頼関係を築くことで、部下は指導を受け入れやすくなります。

そのためには、相手を承認し自己重要感を満たすことが大切です。多少のミスがあっても、部下の考えを否定せずに認めてあげることで、管理職と部下との間に深い信頼関係がうまれます。

また、部下を信頼する姿勢を見せることも大切です。上司が部下を信頼できていなければ、部下が上司を信頼することは難しいでしょう。仕事以外でも部下が興味を持っていることに対して関心を見せるなど、密なコミュニケーションを取っていきましょう。

部下の意見に耳を傾ける

部下が業務中にミスをした際は特に、最初に部下の意見を聞きましょう。業務ミスをなくすには、本質的な原因を部下の話を聞いた上で把握し、部下に理解・対策の指導をする必要があるからです。

部下の意見に耳を傾けずに注意してしまうと、部下との信頼関係が構築できず、解決に至らないかもしれません。指導方法を見直しましょう。

褒める&叱るのバランスを取る

部下を教育するには、注意し指導するだけでなく、褒めることも欠かさないようにするのが大切です。なぜなら、注意や怒られてばかりだと部下のモチベーションが下がってしまうからです。

褒めるときはしっかりと褒め、叱るときはしっかりと叱る、ふたつのバランスが重要です。

感情的な指導、価値観の押し付けをしない

上司と部下が信頼関係を築くためには、対等であることが重要です。

感情的な指導をしてしまうと、部下は上司の顔色ばかりを伺うようになります。相手を怒らせないためにはどうすれば良いのかが優先され、主体性も損なわれます。

また、自分の価値観を部下に押し付けることも、対等な関係を崩す原因のひとつです。上司からすれば成功・失敗体験を話しているつもりでも、部下は一方的な価値観の押し付けと感じているかもしれません。部下を自分の意志で動かそうとしないように注意しましょう。

課題や改善点は明確に伝える

部下がミスをした際に、ダメ出しだけで指導が終わっていませんか。何がダメだったのか、課題や改善点まで明確に伝えることが、適切な部下への指導です。同じミスを繰り返さないように注意するのは大切ですが、フィードバックは時間をかけて行いましょう。

フィードバックする際は、上司から部下へ一方的に伝えないよう心がけることが大事です。部下にも改善点を一緒に考えさせることで、主体的に動けるようになります。上司が答えをすべて出せば「指示待ち人間」になるため、上司と部下で一緒に改善していく姿勢が理想的です。

部下の指導・育成をするときに心がけたいこと

ここでは、部下を指導する際に管理職が意識しておきたい姿勢について紹介します。

自分自身が学ぶ姿勢を見せる

上司は部下に仕事を教えるだけでなく、自分自身も学ぶ姿勢を見せることが大切です。上司の言動一つひとつが、部下の信頼や意欲に影響していることを忘れないでください。

周囲を巻き込むためには、言葉と態度で示していく必要があります。上司が普段から学ぶ姿勢を部下に示していくことで、部下の学習意欲や向上心に良い影響を与えられるでしょう。逆に、上司が現状維持を望むような姿勢を見せれば、部下もそれに倣うということです。

上司は部下の良いお手本となるように行動することで、間接的な指導につながります。常に部下から見られているという意識を持ったうえで仕事に取り組むようにしましょう。

自分に間違いがあれば謝る

指導する側の人間が間違いを起こせば、恥ずかしい気持ちでいっぱいになるものです。上司という立場から、部下に対して謝罪するのが難しいと考える方もいるのではないでしょうか。しかし、自分に間違いがあれば上司・部下に関係なく素直に謝罪するのが大切です。

どれだけ業務に慣れていても、何かしらの間違いは起こります。ミスをしても頑なに謝らなければ、周囲はその人に対して不信感を抱きます。上司と部下の信頼関係が崩れる原因にもなるため、言い訳に聞こえないように素直に謝罪しましょう。

部下の指導に関するスキルや知識を学ぶ

部下への指導方法は、部下のタイプ別やシチュエーションによって異なります。どの場面でも同じ指導方法が通用するとは限らず、引き出しをたくさん持っておくことが大切です。そのためにも、部下の指導に関するスキルや知識を継続的に学びましょう。

部下との接し方に関しては、書籍やセミナー、研修などで勉強できます。指導方法や知識を学ぶことで、指導のバリエーションは豊富になり、部下にフィットした関わり方ができるようになります。さまざまな指導方法を使い分けができるように、スキルを身につけていきましょう。

まとめ

管理職の方は、部下のタイプ別に適切なコミュニケーションや指導を行うことで、組織で活躍できる人材に成長させることができます。しかし、部下の心に働きかけて問題を解決するのは決して簡単ではありません。

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