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遅刻を繰り返す社員への初動対応

遅刻を繰り返す社員は職場に悪影響を及ぼすため、速やかに対処する必要がありますが、頭ごなしに叱りつけるだけでは意味がありません。
まずは本人に遅刻の責任があるのかないのかを把握し、その後の対応を考えることが重要です。
本人に責任がない場合
公共交通機関の遅れや事故などが原因の遅刻は、本人に責任はありません。この場合は懲戒処分などの厳しい対処は適切ではないため、余裕をもって出社するよう促す程度にするなど、柔軟に対処しましょう。
本人に責任がある場合
単に寝坊したなど深刻ではない理由の遅刻は、周囲の社員の士気を下げる原因になります。放置すると社内環境に悪影響を及ぼすため、厳しく対処することが大切です。
遅刻を繰り返す社員の特徴

遅刻を繰り返す社員の具体的な特徴を把握しておくと、より適切な対処法がわかります。ここでは、遅刻を繰り返す社員によくみられる特徴を紹介しますので、当てはまるものがないかを確認してみましょう。
時間配分や予測が苦手
遅刻を繰り返す人は、時間配分や予測が苦手という特徴があります。きちんと定時に出社するには、食事や身支度、通勤時間などを逆算して動かなくてはなりません。
しかし、時間配分が苦手な人は「大体これくらいだろう」と大雑把に考えがちで、時間が足りなくなるのです。
また、予測が苦手な人は忘れ物をする、交通機関が遅延するなどのトラブルを想定できず、常にギリギリの時間配分で行動する傾向にあります。そのため、ちょっとしたトラブルが起きただけで時間が足りなくなり、遅刻してしまいます。
細かいことを気にしない
マイペースで細かいことを気にしないタイプの人は、定時に出社することよりも自分のペースを維持することを優先します。
また、このタイプの人は楽観的な性格であることも多く、注意されても聞き流してしまうため、何度も遅刻を繰り返すケースもあります。
こだわりが強すぎる
こだわりが強すぎるのも、遅刻を繰り返す人の特徴としてあげられます。例えば洋服や髪型、メイクが納得できる仕上がりになるまで家を出られず、家を出る時間が遅くなるなどです。
それだけ時間がかかるなら、もっと早めに起きたら良いと思うかもしれません。しかし、遅刻が多い人は「時間配分が苦手+こだわりが強い」など、複数の原因が組み合わさっているようです。
遅刻を繰り返す社員にうまく対応するポイント

遅刻を繰り返す社員への対応は、単に叱責するだけでは改善につながりません。ここでは、遅刻問題を解決するための5つの重要なポイントについて解説します。
ポイント1|なぜ遅刻をするのか理由を確認する
遅刻の改善には、まず根本的な原因の把握が最も重要となります。
遅刻の理由は社員によって大きく異なり、生活習慣の乱れ、家庭の事情、健康上の問題、通勤経路の問題など様々です。表面的な対応だけでは同じ問題が繰り返されるため、理由を聞き出す必要があります。
このとき、責めるような態度ではなく、問題解決のために協力したいという姿勢で臨むことが大切です。社員が安心して本当の理由を話せる環境を作ることで、適切な対策を講じることができます。
また、遅刻が病気や家庭環境によるものであれば、会社としてサポート体制を整えることも検討すべきでしょう。
ポイント2|遅刻を改善すべきことを伝える
理由を把握した後は、遅刻が組織に与える影響を明確に伝え、改善の必要性を認識してもらうことが重要です。
遅刻がチーム全体の業務に支障をきたすこと、他のメンバーの士気に影響すること、顧客や取引先からの信頼を損なう可能性があることなど、具体的な影響を説明しましょう。感情的に叱責するのではなく、事実に基づいて冷静に伝えることが効果的です。
「あなたの遅刻により、朝のミーティングが毎回遅れて始まり、他のメンバーの予定に影響が出ています」というように、具体例を挙げながら説明すると理解が深まります。
ポイント3|一緒に対策・目標を考える
遅刻改善のための対策や目標は、上司が一方的に決めるのではなく、社員と一緒に考えることが成功の鍵となります。
当事者である社員自身が改善策を考えることで、主体性と責任感が生まれ、実行への意欲が高まります。例えば、「毎朝7時に起きる」「前日に翌日の準備を済ませる」「通勤経路を変更する」など、実現可能な具体的目標を設定しましょう。
目標設定の際は、段階的なアプローチが効果的です。いきなり「絶対に遅刻しない」という高い目標ではなく、社員と話し合いの上で、達成可能な目標を設定します。小さな成功体験の積み重ねで自己肯定感をあげられるでしょう。また、定期的に進捗を確認し、必要に応じて対策の見直しも大切です。
ポイント4|遅刻に関するやりとりを記録する
遅刻に関する面談内容や改善への取り組みを記録として残すことは、様々なメリットがあります。
記録は、遅刻の頻度や傾向を客観的に把握でき、改善度合いを測定できます。また、社員自身も記録で自分の行動を振り返り、改善意識の持続が可能です。
記録には、遅刻の日時、理由、面談内容、設定した目標、改善策などを具体的に記載しましょう。継続的な記録管理により、公平で適切な人事対応が実現可能です。
ポイント5|遅刻の改善が見られたら褒める
遅刻が改善された際には、その努力を認めて適切に褒めることが、継続的な改善につながります。
人は承認されることでモチベーションが高まり、良い行動を続けようという意欲が生まれます。「最近は時間通りに来られていて素晴らしいですね」「努力が成果につながっていますよ」など具体的な言葉をかけで社員の自己効力感が向上するでしょう。
褒めるタイミングも重要で、改善が見られたらすぐに声をかけることが効果的です。小さな改善であっても認めることで、社員は自分の成長を実感できます。
遅刻を繰り返す社員へのNG対応

遅刻を繰り返されるとイライラするかもしれませんが、対応を誤るとハラスメントとみなされるおそれがあります。適切に対処するためにも、遅刻を繰り返す社員へのNG対応を把握しておきましょう。
理由の確認を怠る
遅刻した理由を聞かずに叱るなどすると、人間関係が悪化して業務に悪影響を及ぼす可能性があるため、なぜ遅刻したのかを聞いた上で対処しましょう。ただし、無理に聞き出すようなことはせず、プライバシー保護を厳守することが大切です。
そのまま放置する
注意するのが面倒だからと放置すると、「遅刻しても問題ない」と思われたり、ほかの社員の不満が溜まって社内環境が悪化したりする可能性があります。遅刻には厳正に対処する姿勢を示しましょう。
人前で叱る
遅刻を繰り返す社員が悪いとしても、人前で叱るとハラスメント扱いされるリスクがあります。時間を取って会議室で話すなど配慮を徹底しましょう。
下記の記事にて、部下をうまく叱る方法を解説していますので、ぜひ参考にしてみてください。
部下の叱り方のコツとは?信頼関係を築きながら成長を促す方法を紹介
懲戒処分を行う際の注意点
再三の注意指導でも勤怠状況が改善されない場合、社内規定に則った「懲戒処分」を検討することになるでしょう。このときも、いくつか注意したいポイントがあります。
注意指導記録を確認する
懲戒処分を下す前に、注意指導記録を確認しましょう。注意指導記録とは、遅刻をした日付や理由、指導内容などの記録です。
注意指導記録があることで、「そんな指導は受けていない」などと反発されてトラブルになるのを防ぎやすくなります。
就業規則・雇用契約を確認する
雇用契約書や就業規則を確認し、懲戒事由のなかに遅刻に関する項目の定めがあるかも確認しましょう。
雇用契約書や就業規則は企業と社員の双方が保管するものなので、「そんな規則は知らない」と反発されるのを防止できます。
段階を踏んで懲戒処分を行う
懲戒処分には段階があり、徐々に処分を重くする必要があります。懲戒処分の段階は下記の通りです。
・戒告・譴責(けんせき):口頭や書面で注意する
・出勤停止・減給:社員の就労を一定期間停止する、または労働基準法の「ノーワーク・ノーペイの原則」に則り遅刻した時間は働いていない時間として給与を差し引く
・懲戒解雇:問題を起こした社員を解雇する
なお、遅刻が理由での懲戒解雇はほとんどみられません。遅刻がかなり多い場合でも、依願退職や通常の解雇で処理するのが一般的です。
また、上記以外の処分が定められているケースもあるので、勤務先の規則を確認しましょう。
まとめ
遅刻を繰り返すのは、本人の性格・性質によるところもあります。遅刻を繰り返す社員への対応では、原因を丁寧に確認し、感情的にならずに改善を促す姿勢が大切です。記録を残し、対策を一緒に考えることで本人の自覚を促し、改善が見られた際には積極的に褒めることが有効です。信頼関係を保ちながら継続的にサポートすることで、組織全体の意識改革にもつながります。
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