手遅れになる前に!部下の退職を防ぐために知っておきたいこと

中堅社員や管理職社員の悩みのひとつに、部下の退職が挙げられます。 社内の人材を育成する立場である上司からすると、部下からの辞表は受け入れがたいものです。しかし、部下から退職の意思表示をされた時点で上司が説得し始めても、部下の気持ちは固まっており、すでに手遅れになっていると考えられます。 本記事では、部下が見せる退職の兆候と、退職を防ぐための方法を紹介します。


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部下が退職を決意する理由

大変な就職活動を経て入社した会社を何故、人は辞めるのでしょうか。人が会社を辞める理由は3つに大別できます。

人間関係がうまくいかない

1つ目は、人間関係に問題がある場合です。会社での業務は多くの人との協働が重要になります。人付き合いに問題があるとスムーズに業務を進めることができず、仕事を続ける上で多大なストレスになります。

とくに、評価する上長との関係性は非常に重要です。なかには、本人に問題があるケースも見受けられます。とはいえ、上長からの指示が適切でない、または関心を持っていないような行動は、部下が「自分は期待されていない」と感じてしまうため、退職を検討する要因になります。

ほかにも、セクハラやパワハラなどのハラスメント行為に悩んでいる場合もあります。ハラスメント行為はされている側だけではなく、周りで見ている側にも不快に映るため、連鎖的に退職に繋がりやすく非常に危険です。

待遇に不満がある

2つ目が待遇面への不満です。昨今は、同業他社の給与や福利厚生などの情報を手に入れることも容易なため、とくに優秀な人材は、自社と比較をして不満を抱きやすくなります。自分を大切に扱ってくれない職場の環境は、労働者のためにも避けなければなりません。

「業務内容と比べて給与が低い」「十分な休息が取れない」などの不満は、退職に直結します。また、会社の待遇が適切であっても、本人のワークライフバランスと合致しない場合もあります。たとえば、頻繫に転勤がある業種は子どもがいる世帯には転勤が受け入れにくいので、退職も選択肢の一つに入るでしょう。

やりがいが感じられない

3つ目が、やりがいに関することです。多くの労働者は仕事を通じて社会に何かしら貢献することや、自分の価値を認めてもらいたいと考えています。しかし、力量に対し簡単すぎる仕事を与えるなどはスキルアップに繋がらず、部下のモチベーションは低下します。

とくに、スキルの汎用性が乏しい業種において、長期的なキャリアを考えた際には、そのあまりの狭さから退職という選択肢が浮かんでも不思議ではありません。

部下が退職を考えているときの兆候

部下が退職を決意したとき、態度や行動に何か影響があります。ここからは「退職を考えているのでは?」と疑うべき部下の行動を紹介します。1つでも当てはまる場合は、すぐに対策が必要です。

仕事のモチベーションが低下している

1つ目は、仕事へのモチベーションが低いことです。退職のタイミングにもよりますが、退職を決意した時点で会社に長く居続けることは考えていません。続ける気がない会社の業務の成否には興味がないので、自分から行動することが減ります。

また、自分の評価への影響も気にしなくなるため、上司から失敗やさぼりを指摘したり、同僚がたしなめたりしても、それらの態度をあらためることはしません。一方で、「怒る」「謝意を示す」などの反応があるならば、これからの働きかけで退職の意志を変えさせることも可能です。

愚痴や不満を言うようになる

2つ目が会社に対しての愚痴や不満を言うようになることです。普段から仕事をしていれば上司や同僚、会社に対しての愚痴や不満はあるでしょう。しかし、その愚痴の数が依然と比べて多くなった場合は注意が必要です。少々の愚痴は、今の状況を改善してくれるという期待の発言でもありますが、明らかに愚痴が多くなった場合は、上司や会社への攻撃です。

本人は自分がどう思われようと気にしていないので、相手に対して常に攻撃的になります。対して、愚痴が減ることも、すでに期待を失って会社を見限っているという危険な兆候であるため注意が必要です。

コミュニケーションを取らなくなる

3つ目が周囲とのコミュニケーションを取らなくなることです。会社は、ほかの人との協働によって成り立っているため、周囲とのコミュニケーションが非常に重要になります。懇親会などの会社のイベントに参加せず、部下がコミュニケーションの機会をつぶそうとしているならば、すでにその会社からの離脱を考えている証拠です。

「挨拶を返さない」「返事をしない」などの基本的なコミュニケーションさえ取らなくなればいよいよ危険な状況です。

遅刻や欠勤が増える

4つ目が、遅刻や欠勤が増えることです。メンタルに問題があり休んでいる、モチベーションを失って仕事をしたくないという可能性は勿論あります。ほかにも、この欠勤や遅刻の時間を使って転職活動を行っている可能性があります。

企業の営業時間はほぼ同じなので、転職活動をするためにはどうしても休みが必要です。不意に遅刻や欠勤が増えた場合は、その時間を利用して面接などを受けている場合もあるので注意して様子を伺ってみましょう。

部下の退職を防ぐための対策

部下から退職の兆候が見えた時点で、上司は何かしらの対策を打たなければなりません。退職の理由は誰しもが考えるものなので、一人が退職すると連鎖的に退職が相次ぐ可能性があります。

いち社員の退職理由の改善が職場全体の改善につながることも、よくある話であるため早急に対策を始めましょう。在籍している人材に気持ち良く働いてもらうには、上司の行動は重要です。

積極的にコミュニケーションをとる

退職を検討し始めるきっかけは部下によって様々なので、理由を掴まなければ対策もできません。まずは積極的に部下とコミュニケーションを取ることから始めましょう。そのコミュニケーションの中で得た意見や愚痴から改善の糸口をつかめる場合もあります。

もし、すでにコミュニケーションを取れない状況であれば、上長や第三者の介入も有効です。ただし、必要以上にコミュニケーションを取ろうとすると部下からは「退職を慰留しようとしている」と警戒されるため、自然な形でのコミュニケーションを心がけましょう。

働きやすい環境を作る

部下からの不満を確認できたら、次は上司として職場を働きやすい環境に整えるように動きます。とくに、人間関係への問題は職場全体の問題として捉え、部下への対応に問題はなかったか、ハラスメント行為は横行していないかなどを確認しましょう。

また、給与面や福利厚生などの待遇に問題があるならば、より好待遇を用意するなど本人の不満に直接的に訴えられるような改善を行うことが重要です。ただし、あくまでも待遇面の改善は「提案」と「交渉」なので、折り合いがつかない場合は素直に退職を認めることも考えましょう。

キャリアの設計やスキルアップを支援する

長く会社で働いてもらうためには、部下に明るい展望を持ってもらわなければなりません。そのためには、キャリア設計やスキルアップの支援が有効です。昇進過程や今後の事業において果たしてもらいたい役割などを話すことで、部下も「期待されている」と感じて、やる気を回復させてくれるでしょう。

ここで重要なのは、具体的な展開を部下と共認することです。丁寧な人事評価を行い、部下のできている面、不足している面を確認し、より強みが伸ばせるようにサポートしましょう。ほかにも部下の持つスキルが活かせる部署への転属なども有効な方法です。

ストレスチェックや相談窓口を設置する

ストレスを感じても周囲には吐き出しにくく、直接上司に職場の悩みを訴えるのは、さらに難しいものです。事前に部下のストレスなどを確認するためにも、常日頃からストレスチェックや健康管理は欠かせません。

労働者の心身の健康を守るために、50名以上の事業所には産業医など安全衛生の保持が義務付けられています。ほかにも、ハラスメントに関するホットラインを設けるなど、労働者が利用できる第三者的な目線の入る相談窓口を用意することが重要です。不満の吐き出し口があるだけでも、退職を決意する可能性は十分に減らせます。

まとめ

部下も悩み抜いた末に退職を決意しています。「突然、退職を伝えられた」と感じるなら、部下からのサインを見落としているということです。

朝、職場を見渡して普段と様子が違う部下はいませんか。少しでも様子がおかしいと思ったら、まずは話をしてみましょう。退職を防ぐための第一歩は、こまめに部下とコミュニケーションを取ることです。部下の吐き出す愚痴や不満を職場環境や上司としての接し方を改善する糧としましょう。