ストレスマネジメントとは?得られる効果と具体的なやり方を解説

部下や従業員がストレスを受けて悩んでいると、職場の士気や業績も低下しがちです。人間関係も悪くなってしまうため、上司として、ストレスマネジメントのメソッドを取り入れてみてください。職場環境の改善が期待できます。 今回はストレスマネジメントの概要やメリット、具体的な取り組み方をご紹介していきます。


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ストレスマネジメントとは?

「ストレスマネジメント」とは、ストレスと向き合い、うまくコントロールすることです。

適度なストレスは良い緊張感を生むものの、強いストレスにさらされるとメンタルヘルスの不調を招く可能性があります。職場で長く、安定して働き続けるためにも、ストレスマネジメントの仕方を学ぶことは大切です。

ストレスマネジメントを実施するうえで重視すべきなのは、ストレスにさらされていることに自ら気付くことです。そしてストレスをやり過ごす方法を知り、実践していくようにしましょう。

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企業にストレスマネジメントが必要な理由

企業における「ストレスマネジメント」とは「業務上で生じるさまざまなストレスを緩和できる環境を整備する取り組み」を指します。近年では、過剰なストレスを原因とするメンタルヘルス不調を訴える社員が増えており、社会問題にも発展しています。

たとえば、厚生労働省が発表している「過労死等に関する請求件数」(※1)によると、令和3年度の「過労死等に関する請求」は、前年度に比べ264件増加しています。分野別でみると「精神障害」の事案での増加件数が特に多く、前年度より12%も増えています。

社員がメンタルヘルス不調により「休業」や「医師による就業制限」を受けてしまうと、企業は人手不足に陥り、正常な業務運営に支障をきたしてしまいます。社員が心身ともに健康で働ける環境を整備する「ストレスマネジメント」が現代の企業に求められています。

(※1)参照元:厚生労働省ホームページ「令和3年度「過労死等の労災補償状況」を公表します

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ストレス反応とストレス耐性

ストレスマネジメントの手法を知る前に、ストレスについて詳しく解説していきます。

「ストレス」とは、外部から刺激を受けたときに、心身にかかる負担のことです。睡眠不足や体調不良、人間関係、仕事のプレッシャー、気温、大気汚染、花粉など、ストレスにはさまざまな要因があります。

ストレスを受けたときに起きる「ストレス反応」

強いストレスを受けたときに心身に起きる変化は、「ストレス反応」と呼ばれています。

ストレス反応は、大きく3つに分類できます。ストレス反応は正常な現象ではあるものの、慢性化すると本格的な疾患に繋がるリスクがあるため、注意してください。

・身体的反応
不眠やだるさ、疲労、食欲不振、頭痛、肩こり、動機、めまい など

・心理的反応
集中力の低下やイライラ、不安感、落ち込み、投げやりになる など

・行動的反応
生活の乱れや過食、性欲減退、暴言暴力、作業能力低下 など

ストレス耐性が高い人と低い人の違い

実は、ストレスを感じやすい人もいれば、ストレスを感じにくい人もいます。ストレス耐性の高さは個人差が大きく、本人の性格などによって左右されるといわれています。

すべての人に当てはまるわけではないものの、競争心が強くまわりを気にする人、我慢をしてため込んでしまう人は、ストレスを感じやすい傾向があります。ストレスが高じたときに心身の不調に陥りやすいため、上司としてとくに注意して見守る必要があります。

逆にマイペースな性格の人は、比較的ストレスを感じにくく、ストレス耐性が高いといえます。感情表現が豊かでムードメーカーになりやすい人、オンオフの切り替えが上手で、職場で成果を出しやすい人です。

ストレス耐性は高めることができる

性格だから仕方ないとあきらめている場合も、心理カウンセラーなど専門家に相談することで 、思考パターンを変えたり、感情のコントロールができるようになったりと、ストレス耐性を高めることは可能です。自己理解を深めることで、上手にストレスと付き合えるようになりましょう。 ストレス耐性を高めるため の方法として、 減点思考をやめることも効果的です。 物事を減点思考で考えていると、失敗した経験ばかりが増えてしまいます。

同じ結果であっても減点、加点の両方ができます。できなかったことではなく、できたことに目を向けてください。

生活リズムを整えることも、ストレス耐性を高めるのに役立ちます。規則正しい生活を心がけましょう。適度な運動や栄養バランスの食事で、ストレスに負けない強い身体を作ってください。

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ストレスマネジメントによって得られる効果

職場でストレスマネジメントを実践して、得られるメリットを紹介します。

社会人生活を送るなかで、ストレスを完全に排除することはできません。一人ひとりがストレスマネジメントを行うことで、うまくやり過ごすことが求められます。

従業員のメンタルヘルスが保たれる

職場にストレスマネジメントを取り入れることで、従業員のメンタルヘルスを良い状態で保つことが可能です。

ストレスマネジメントを実践することによって、従業員の一人ひとりが、自分の状態を正しく把握できるようになります。本格的な不調が起こる前に、早めに対処することで、重症化を防げるでしょう。

上手にストレスと向きあい、メンタル不調を防ぐことは、長く働き続けるうえでも重要です。ストレスマネジメントで従業員のメンタル不調を防ぐことは、仕事のミスを減らし、最大のパフォーマンスを引き出すのにも役立つため、企業にとっても一石二鳥です。

職場環境が改善される

部下や従業員がストレスマネジメントを実践することで、職場環境が改善される効果も期待できます。従業員がストレスにうまく対処できるようになると、職場全体が明るくなります。

ストレスが軽減されると、従業員は働きやすくなり、仕事に対してやる気がでます。仕事に集中して取り組めることが、生産性の向上にも繋がるでしょう。

ストレスマネジメントは、職場全体で取り組むことが大切です。ストレスに対するお互いの理解がすすむことで、職場内のコミュニケーションも取りやすくなり、部下の体調管理や部下が相談しやすい環境を整えられるようになります。

休職や離職を防ぐ

社員の「休職」や「離職」は、企業にとっても大きなダメージになります。職場内の慢性的なストレス環境下での業務は、心身ともに不調をきたし、休職や医師の就業制限を引き起こします。さらに悪化すれば、社員の離職を招く結果となり、人手不足に陥ります。

人手不足に陥ると、ほかの社員は業務量が増加し、職場ストレスがより高まり悪循環となります。また、休職者や離職者の増加は、優秀な人材獲得の観点からも非常にマイナスな事態といえます。取引先や顧客からの企業ブランドイメージ低下にもつながる大きな要因のため、ストレスマネジメントへの取り組みが非常に重要です。

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ストレスマネジメントの具体的な方法

それでは、職場にストレスマネジメントを取り入れる、具体的な方法を紹介します。

ストレスマネジメントは、「セルフモニタリング」と「ストレスコーピング」の2段階に分けてすすめるのが一般的です。

セルフモニタリング

ストレスマネジメントは、セルフモニタリングで自分自身を知ることから始めます。自分の体調や気分の変化を日々記録していくことで、自分がどういうときにストレスを感じるか、どのようなストレス反応が起こりやすいのかをチェックしましょう。

自分のストレス反応を客観的に分析することで、心に余裕が生まれる嬉しい効果も期待できます。

セルフモニタリングは、自身のストレスを「書き出す作業」です。頭の中や心の中にたまっているストレスをアウトプットし、客観的に捉えることが目的です。

以下の5つの視点を可視化しましょう。書き出しが難しい場合は、他人でも客観的に捉えやすい「行動」からの書き出しがおすすめです。ストレスを感じた直後の様子を見ていた同僚などに協力してもらいましょう。

ストレスが生じる状況(ストレッサー)を書き出す

まずは「ストレスが発生する状況」を思い返します。ストレスの大小に関わらず、少しでも嫌な気持ちを感じた出来事は書き出してください。「これくらいはストレスに入らない」「これくらいは我慢して当然」と判断した出来事も、考えた時点で小さなストレスといえます。

ストレスが生じたときに頭に浮かんだ考えを書き出す

ストレスを感じた直後の考えを書き出します。「必死にやったのに何故?」「仕事が向いてないのかもしれない」「自分はやっぱりダメな人間だ」「相手の手順に問題がある」など、そのとき思いついた「考え」を書き出します。「気分」や「感情」と混同しがちですが、ここでは「思考」「考え方」に着目しましょう。

ストレスが生じたときの気分・感情を書き出す

ストレスを感じた直後の「気分」や「感情」を書き出します。「辛かった」「泣きたくなった」「イライラした」「不安になった」など、「どんな気持ちになったのか?」を書き出します。ストレスを感じる直前の気分や感情と比較してみましょう。

ストレスが生じたときの身体反応を書き出す

ストレスを感じた後の「身体的反応」を書き出します。「心臓がバクバクした」「汗や涙が止まらなくなった」「頭が熱くなった」「胃が痛くなった」「眠れなくなった」「声が震えるようになった」などの「ストレス後の症状」を思い返してみましょう。

ストレスが生じたときの行動を書き出す

ストレスを感じた後の「行動」を書き出します。「頻繁に頭を掻くようになった」「人と距離を取るようになった」「ミスを隠すようになった」など、他人から見ても分かる行動(事実)を思い返してみましょう。ストレス発散法がある場合は、その方法でも構いません。

ストレスコーピングを用意する

次に、ストレスコーピングを用意し、ストレスやストレス反応の負担を減らします。対処法を習得することで、マネジメント力を高めましょう。

ストレスコーピングには3つの種類があり、それぞれアプローチの仕方が異なります。使えるコービングの種類を増やしておけば、幅広いストレスに対処できるのでおすすめです。

・問題焦点型コーピング
職場環境や仕事内容を調整するなど、ストレスに立ち向かうことで、直接的な解決を目指すアプローチです。

・情動焦点型コーピング
物事の良い面に注目する、誰かに愚痴を聞いてもらって感情を吐き出すなど、自分の気持ちや感じ方を調整し、ストレスの捉え方を変えてやわらげるアプローチです。

・ストレス解消型コーピング
自分なりのリフレッシュやストレス発散方法をとおして、受けたストレスそのものを解消するアプローチです。

東京ビジネスラボラトリーへ相談

職場の部下や従業員のためにストレスマネジメントを取り入れたいとお悩みなら、東京ビジネスラボラトリーへご相談ください。

東京ビジネスラボラトリーは、心理学を用いて、企業のメンタルサポートをお手伝いしています。ストレスチェックや心理カウンセリングなど、利用する企業ごとに最適なプログラムを提案します。

また従業員一人ひとりのパフォーマンスを引き出す、企業研修も実施しています。一般の社員向けだけでなく、部下への接し方に悩む管理職の方、経営者向けの研修も行っています。

ストレスマネジメントで部下のメンタルヘルス不調を防ぎたい方、職場環境の改善を目指す企業様も、どうぞお気軽に東京ビジネスラボラトリーにご相談ください。

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ストレスマネジメントを実施する際の注意点

ストレスマネジメントを実施する際は、企業側だけでなく、社員一人ひとりへの教育も必要です。社員の「ストレスマネジメントへの理解と意識向上」のためにも、まずは「社員が相談しやすい環境」を整備しましょう。

積極的に相談できる環境をつくる

「積極的に相談できる環境」とは「相談相手」「タイミング」「相談内容」など、配慮すべき点が多岐に渡ります。

適切な相談相手を設定する

相談者の聞き手には、相談者が気兼ねなく話せる相手を設定します。相談者と聞き手に役職等の上下関係があると、お互いの地位を意識してしまう表面的な対話で終わってしまいます。「話だけは聞いた」という形だけの相談機会にならないよう注意しましょう。

相談のタイミングを見極める

相談者の話を聞くときは「対話のタイミング」を見極めます。たとえば繁忙期などは、互いに時間に追われているため、腰を据えての親身な対話が難しくなります。相談者のプライベート時間に配慮しつつ「就業後」など、心のゆとりが生まれやすい時間を設定しましょう。

要点を絞って対話する

相談者の悩みの数は人それぞれ異なります。一度の対話ですべての話を受け入れることも有効ですが、ある程度の時間設定を設けましょう。お互いに決まった時間があることで「共有すべき最も大切な点」が明らかになります。企業側は事前に「特に明確にしたい内容」をまとめておき、相談者が迷わず話し出せる流れを講じておきましょう。

互いに隠し事をしない

相談者の話を聞くときは、互いに隠し事をせず、素直な気持ちや思いを伝え合いましょう。相手の出方を伺うような対話では、根本的な解決には至りません。相談者が言いにくい意見でも、聞き手は否定することなく受け入れる姿勢がとても大切です。

互いに解決する姿勢をもつ

相談者との対話の際は「協力して解決する」という意識をもちましょう。企業と相談者、いずれかが丸投げする姿勢は好ましくありません。相談の機会を無駄にしないためにも、相談者の話を受け入れつつ、互いに歩み寄れる解決法を導きましょう。

「メンター制度」について

企業がストレスマネジメントに取り組むにあたり、厚生労働省では「メンター制度」を設けています。「メンター」とは「先生」「師匠」「恩人」など、人生を導いてくれたり、人生の機転となるきっかけを与えてくれたりする存在を指します。

「企業におけるメンター」とは、「上司」「先輩」など、企業教育の過程で自然に発生する関係のことです。一般的には、相談者と直接の利害関係がない社員が担当するケースがほとんどです。メンター制度は上下関係のない、ほかの社員が担当することから、別名「斜めからの支援」ともいわれています。

独立行政法人労働政策研究・研修機構が2018年に公表した「メンター制度導入とその効果」(※2)によれば「1年以内の離職率が0%」「3年以内の離職率も減少した」という報告が挙がっています。「メンターの選定」については、外部カウンセラーなどの専門家への委託も有効です。相談者対応のみならず、企業が行うべきストレスマネジメントへの助言も得られるメリットがあります。

(※2)参照元:独立行政法人労働政策研究・研修機構「メンター制度導入とその効果─ ─同制度で離職率を改善

ストレスをゼロにしようとしない

ストレスマネジメントを実施するにあたり「ストレスゼロ」を目標にしてはいけません。ストレスを完全に無くすことは難しく、ストレスマネジメントでめざすべき目標は「ストレスの軽減」です。仕事において「適度なストレス」はポジティブな要素を持ちます。

適度なストレスにより「仕事のモチベーション低下」を防ぎ、多少のストレス耐性が身につきます。「ストレス」を一方的にネガティブなものと決めつけ、排除することなく「ストレスと向き合う」といった視点を持ちましょう。

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まとめ

ストレスマネジメントは誰でも習得でき、職場環境を改善するだけでなく、パフォーマンスの維持や生産性の向上にも役立ちます。業種や規模を問わず、どのような職場でも実践できるため、ぜひ取り入れてみてください。

外部のメンタルサポートや企業研修を利用するのも、賢い選択です。業務負担を減らして、部下や従業員のメンタルヘルスの不調を防ぎましょう。