プレゼンティーイズムとは?アブセンティーズムとの違いや改善効果、具体的な改善策も解説

プレゼンティーイズムは企業にとって目に見えにくい問題でありながら、医療費以上の損失をもたらしています。人事担当者や管理職の方々は、この状態にある従業員の増加を感じていても、具体的な対応策が見えないとお悩みではないでしょうか。今回は、プレゼンティーイズムの定義から測定方法、改善による効果、そして実践的な対策まで、企業が取り組むべきポイントを詳しく解説します。


この記事は約7分で読み終わります。

プレゼンティーイズムとは?

プレゼンティーイズムの基本的な意味と、よく混同されるアブセンティーイズムとの違いについて解説します。

プレゼンティーイズムの定義

プレゼンティーイズムとは、心身の不調を抱えたまま出社し、本来のパフォーマンスを発揮できていない状態を指します。日本語では「疾病就業」と訳され、WHOが提唱した概念です。

花粉症、頭痛、腰痛、睡眠不足、メンタル不調などを抱えて業務を行うケースが該当し、出勤していても集中力低下やミス増加により業務効率が大きく落ちます。

企業にとって見えにくい損失で対策が遅れがちですが、研究では医療費以上のコストを生むことが明らかになっています。

アブセンティーイズムとの違い

アブセンティーイズムは、心身の不調で欠勤・遅刻・早退する状態を指します。プレゼンティーイズムが「働いているが生産性が低い状態」であるのに対し、アブセンティーイズムは「働けなくなる状態」です。

欠勤日数で把握しやすいため認識されやすい一方、実際の健康関連コストではプレゼンティーイズムの損失の方が大きいことが研究で示されています。

カウンセリングサービス『Clido』の詳細はこちら

プレゼンティーイズムの測定方法と損失額

プレゼンティーイズムによる企業の損失を可視化するための主な測定方法と、損失額の算出方法を解説します。

プレゼンティーイズムの測定方法

代表的な測定方法は以下の5つです(経済産業省「企業の『健康経営』ガイドブック」より)。

・WHO-HPQ
・東大1項目版(SPQ)
・WLQ
・Wfun
・Qqmethod

いずれもアンケート形式で生産性への影響を測定し、妥当性・信頼性が確認されています。

WHO-HPQは世界保健機関が開発した方法で、3つの設問から絶対的プレゼンティーイズムと相対的プレゼンティーイズムを算出します。

東大1項目版は、たった1問で生産性損失割合を測定できる簡便な方法として、日本企業で広く活用されています。

WLQは25問の設問で、パフォーマンス低下の原因や特徴を詳しく把握できるのが特徴です。

参考:経済産業省「企業の「健康経営」ガイドブック~連携・協働による健康づくりのススメ~

プレゼンティーイズムの損失額

損失額は、測定された損失割合に従業員の報酬を掛けて算出します。

計算式:プレゼンティーイズム損失額=損失割合×総報酬年額

総報酬年額は「標準報酬月額×12+標準賞与」で計算します。

アブセンティーイズムの損失は、「欠勤日数×総報酬日額」で算出できます。

ある研究では、年間損失額は健康な従業員で約60万円、高ストレス者で109万円、超高ストレス者で139万円と報告されています。

出典:ユナイテッド・ヘルスコミュニケーション株式会社「ストレスによる企業のコスト損失額は、高ストレス者一人当たり150万円に達する可能性があることが判明

カウンセリングサービス『Clido』の詳細はこちら

プレゼンティーイズムを改善する効果

プレゼンティーイズムを改善することで、企業が得られる5つの主要な効果について解説します。

業務の生産性や効率の向上

プレゼンティーイズムの状態では、集中力の低下やケアレスミスの増加により、本来の能力を発揮できません。従って、従業員が心身ともに健康な状態を維持できれば、業務効率が飛躍的に向上します。

健康的で活気ある職場環境を整えることで、従業員は高いモチベーションを保ちながら業務に取り組めるようになり、組織全体の生産性が大きく向上します。

さらに、優秀な人材の獲得や定着率の向上にもつながるため、長期的な企業価値の向上が期待できます。

健康経営の実現

プレゼンティーイズムの測定と改善は、健康経営を実現するための重要な施策となります。

従業員の健康管理の一環としてプレゼンティーイズムを測定することで、体調不良やメンタルヘルス不調の兆候を早期に発見可能です。

健康経営とは、従業員の健康管理を経営的な視点で捉え、戦略的に実践することを意味しており、プレゼンティーイズム対策はその中核をなす取り組みと言えます。

従業員の満足度と人材定着率の向上

健康的で働きやすい環境の整備で、従業員満足度が向上します。従業員は自身の仕事に対し、より前向きな姿勢で臨め、エンゲージメントの向上にもつながります。

早期の段階でプレゼンティーイズムに気づき適切に対処すれば、従業員の離職を防ぎ、人材の定着率を上げられます。

採用や人材育成にかかるコストの削減にもつながるため、企業にとって大きなメリットとなるでしょう。

企業の社会的なイメージの向上

プレゼンティーイズム対策に積極的に取り組む企業は、社会的評価が高まります。

健康経営や従業員の福利厚生に力を入れている企業として、顧客や求職者に広く認知されることで、企業のブランド価値向上につながるでしょう。

健康経営優良法人の認定取得などを通じて、対外的なアピールも可能となります。優秀な人材の採用活動においても、企業の魅力を高める要素となり、競争力の強化に貢献します。

従業員のワークライフバランスの改善

プレゼンティーイズムの改善は、従業員のワークライフバランスの向上に直結します。

心身の健康を保ちながら働ける環境が整えば、仕事と私生活の調和が取りやすくなります。適切な休暇取得の推進や柔軟な働き方の導入により、従業員はストレスを軽減し、より充実した生活を送ることができるでしょう。

結果として、従業員の長期的な健康維持と企業の持続的な成長の両立が実現されます。

カウンセリングサービス『Clido』の詳細はこちら

プレゼンティーイズムを改善する方法

ここでは、企業がプレゼンティーイズムを改善するための4つの施策を紹介します。

健康管理を会社内で実施する

従業員の健康管理を組織として行うことが改善の第一歩です。健康診断やストレスチェック、睡眠管理、健康プログラムを活用し、従業員の状態を把握します。

従業員50人以上の事業場では年1回のストレスチェックが義務化されています。結果を分析し、メンタル不調の早期発見につなげることでプレゼンティーイズムの予防が可能です。衛生管理者など、中心となる担当者を明確にすることも効果があります。

ワークライフバランスの最適化を図る

働きやすい環境づくりはプレゼンティーイズムの予防に直結します。私生活を犠牲にする働き方はストレスが蓄積し、不調を招きやすくなります。

有給取得の推進、フレックスやリモートワーク導入など柔軟な働き方を認めることで、従業員の負担を減らせます。

ワークライフバランスが整えば、心身が回復し、より高いパフォーマンスが期待できます。

職場環境を改善する

快適な職場はプレゼンティーイズムを大幅に抑えられます。室温・照明・清潔さといった物理的環境の改善に加え、困ったときに相談しやすい雰囲気づくりも重要です。

勤務中に軽い運動時間を設ける、ストレッチやラジオ体操を取り入れるなど、長時間同じ姿勢による負担を軽減する工夫も効果的です。運動不足がストレスや疲労につながるケースも多く、積極的な改善が求められます。

健康相談しやすい環境をつくる

体調について気軽に相談できる環境整備も欠かせません。日頃からコミュニケーションを取り、小さな変化に気づける関係性を築くことが大切です。

1on1ミーティングや雑談の場を設定すると、体調不良を言い出しやすい雰囲気が生まれます。複数名で業務をカバーできる体制や情報共有の仕組みにより、「休むと迷惑」という心理的負担も減らせます。

社内外の相談窓口を用意することで、さらに相談しやすい体制を整えられます。

カウンセリングサービス『Clido』の詳細はこちら

まとめ

プレゼンティーイズムは、心身の不調を抱えながら働くことで生産性が低下し、医療費以上の損失を生む重要課題です。測定方法により影響を可視化し、損失規模を把握することが対策の第一歩となります。健康管理の強化、働き方の柔軟化、職場環境の改善、相談しやすい体制づくりを進めることで、生産性向上や健康経営の推進、従業員の満足度向上につながり、企業の長期的成長にも寄与します。

東京・ビジネス・ラボラトリー(TBL)では、プレゼンティーイズム対策を含む「企業研修・セミナー」を提供しています。健康経営やメンタルヘルス対策、コミュニケーション改善など、幅広いプログラムを用意しており、心理学的アプローチによるヒアリングから設計された最適な研修を企業様の状況に合わせて作成します。プレゼンティーイズム改善にお悩みの企業様は、ぜひお気軽にご相談ください。

心理カウンセリングのプロに聞く「やる気のない部下の対処法」
人間力アップ